外国籍スタッフの中には、宗教上の理由で食べられないものがある人、決まった時間にお祈りをする人、母国の料理を毎日自分で作る人など、さまざまな生活習慣を持つ人がいます。こうした習慣は、住まいの設備や同居のルール、そして近隣との関係にも関わってきます。
この記事では、宗教や食習慣について住まいで配慮したいポイントと、トラブルを防ぐための工夫、本人への聞き方を解説します。
結論:「国籍で決めつけず、本人に聞く」が出発点
同じ国の出身でも、同じ宗教を信じていても、生活の習慣は人によって違います。国籍や宗教から「この人はこうだろう」と決めつけず、入居の前に本人に、住まいで必要なことを聞くことが大切です。
そのうえで、ルームシェアの組み合わせ、キッチンの使い方、においや音への配慮など、本人の習慣と日本の住まいのルールを両立できる方法を、一緒に考えていきましょう。
入居の前に本人に聞いておきたいこと
- 食べられないものや、料理で気をつけていることはあるか
- 調理器具や冷蔵庫を、ほかの人と分けたいか
- お祈りをする場合、時間や場所で必要なことはあるか
- 大切にしている行事や、その時期の生活の変化はあるか
- 住まいの設備で、ほしいもの・困りそうなことはあるか
聞くときは、「答えたくないことは答えなくてよい」ことを伝え、プライバシーに配慮しましょう。宗教について根掘り葉掘り聞くのではなく、住まいで困らないために必要なことを聞くという姿勢が大切です。
食習慣への配慮
食材と調理器具
宗教上の理由で豚肉やお酒を口にしない人、肉を食べない人などは、食材そのものだけでなく、調理器具や食器が触れることも気にすることがあります。ルームシェアでは、次のような工夫が考えられます。
- 鍋やフライパン、まな板、食器を一人ずつ、または習慣の近い人ごとに分ける
- 冷蔵庫の中で、食材を置く段を分ける
- 食習慣の近い人どうしでルームシェアを組む
習慣が大きく違う人どうしの同居は、お互いにストレスになることがあります。ルームシェアの組み合わせや、1Kにするかの考え方は社宅は1Kとルームシェア、どちらで用意する?費用と定着で比べる選び方で解説しています。
キッチンの設備
毎日自分で料理をする人にとって、キッチンの使いやすさは住まいの満足度を大きく左右します。コンロの口数、大きな鍋が置けるか、換気扇の強さなどを、物件を選ぶときに確認しましょう。炊飯器や電子レンジなど、そろえておきたい家電は家具・家電はどこまで用意する?最低限そろえたい生活用品リストでまとめています。
食材を買える場所
宗教や食習慣に合った食材を扱う店が近くにあるかどうかも、暮らしやすさに関わります。ハラール食材の店や、母国の食材を扱う店の場所を、住まいの周りの情報として伝えておくと安心です。近くにない場合は、通信販売で買える店を案内する方法もあります。職場の周りの生活環境の確認は受入れ前に確認したい職場周辺の住環境|物件が少ない地域の見極め方で解説しています。
料理のにおいと油の扱い
香辛料を多く使う料理や、揚げ物、発酵した調味料などのにおいは、集合住宅では廊下や隣の部屋に広がり、苦情につながることがあります。料理そのものをやめてもらうのではなく、においを外に出しにくくする工夫を伝えましょう。
- 料理のときは換気扇を必ず回す
- 玄関のドアを開けたまま料理をしない
- ベランダや廊下で調理をしない
- 生ゴミはにおいが漏れないよう袋を縛って出す
使った油を流しに捨てない
揚げ物などで使った油を流しやトイレに捨てると、排水管が詰まる原因になります。詰まりの修理や、油汚れによる換気扇・壁の傷みは、退去のときの原状回復の費用につながることもあります。油は固めるか、紙や布にしみこませてゴミに出すなど、住んでいる地域のルールに沿った捨て方を伝えましょう。退去時の費用の考え方は外国籍スタッフの住まいのトラブル対応|騒音・ゴミ・退去時の原状回復で解説しています。
お祈りの場所と時間
決まった時間にお祈りをする人には、部屋の中に静かにお祈りできる場所が必要です。1Kの部屋でも場所は確保できますが、ルームシェアでは、個室があるか、共用の部屋を使う時間を同居人と調整できるかを確認しておきましょう。
早朝や夜遅くにお祈りをする場合、声や物音が近隣に響かないよう配慮が必要になることもあります。お祈りそのものを制限するのではなく、時間帯と音の大きさについて、本人と一緒に考えましょう。音の苦情への対応は住まいの騒音の苦情を受けたとき|聞き取りから改善までで解説しています。
また、住まいの近くにモスクや寺院、教会など、本人が通える宗教の施設があるかどうかは、本人にとって大きな安心につながります。同じ信仰を持つ人とのつながりは、孤立を防ぐことにも役立ちます。外国籍スタッフの孤立を防ぐ|地域の交流の場や相談窓口につなぐも参照してください。
宗教上の行事の時期
たとえばラマダン(断食の月)の期間は、日の出前の早朝や日没後に食事をとるため、生活のリズムが大きく変わります。早朝の調理や、夜の集まりが増えることで、物音や光が近隣に影響することがあります。行事の時期を事前に聞いておき、同居人や近隣への配慮の方法を一緒に考えておきましょう。
大切な行事の時期にあわせて一時帰国を希望する人もいます。一時帰国の手続きと留守中の住まいの管理は一時帰国するときの手続き|再入国の手続きと留守中の住まいの管理で解説しています。
水回りの使い方
トイレで用を足したあとに水で洗う習慣を持つ人もいます。温水洗浄便座があれば使い方を説明し、ない場合は床が濡れたままにならないよう、拭き取りやマットの使い方を伝えましょう。床が長く濡れたままだと、床材が傷む原因になります。設備の使い方は、写真付きの資料にしておくと伝わりやすくなります。資料の作り方は外国籍スタッフ向け住まいのルール資料の作り方|多言語化のコツで解説しています。
宗教・食習慣への配慮のチェックリスト
- ☐ 入居の前に、住まいで必要なことを本人に聞いた
- ☐ ルームシェアの組み合わせで、食習慣や生活習慣の違いを考えた
- ☐ 調理器具や冷蔵庫の分け方を決めた
- ☐ キッチンの設備(コンロ・換気扇)を確認した
- ☐ 料理のにおいへの配慮と、油の捨て方を伝えた
- ☐ お祈りの場所と時間について、同居人や近隣への配慮を一緒に考えた
- ☐ 行事の時期と、その間の生活の変化を聞いた
- ☐ 食材店や宗教の施設の場所を伝えた
まとめ
- 宗教や食習慣は人によって違う。国籍で決めつけず、住まいで必要なことを本人に聞く
- ルームシェアでは、調理器具や冷蔵庫の分け方、組み合わせを工夫する
- 料理のにおいは、換気扇やドアの開け閉めで外に出しにくくする。使った油は流しに捨てない
- お祈りの場所と時間、行事の時期の生活の変化について、同居人や近隣への配慮を一緒に考える
- 食材店や宗教の施設への行きやすさも、住まい選びの条件に入れる
宗教や生活習慣への配慮のしかたに、一つの正解はありません。本人の考えを尊重しながら、日本の住まいのルールと両立できる方法を一緒に探していきましょう。