外国籍スタッフを何人か受け入れるとき、社宅を1Kなどの1人1室で用意するか、広めの部屋でルームシェアにするかは、受入れ企業や派遣会社がよく迷うポイントです。ルームシェアのほうが家賃は抑えられますが、同居のストレスから住まいへの不満が出て、離職につながることもあります。
この記事では、1Kとルームシェアを費用・定着・管理の手間の3つの視点で比べ、どちらを選ぶかの考え方を解説します。ルームシェアの広さの基準や契約の注意点は複数名を同時に受け入れるときの住まい|ルームシェアの広さと契約の注意点でまとめています。
結論:最初はルームシェア、定着したら1Kへの「段階的な切り替え」も選択肢
費用だけで比べると、ルームシェアのほうが一人当たりの負担は軽くなります。一方で、プライバシーや生活リズムの違いによるストレスは、1Kのほうが小さくなります。
どちらか一方に決めるのではなく、来日直後は同じ国の仲間とルームシェアで暮らし、生活に慣れて本人が希望したら1Kに移るという段階的な形も考えられます。来日直後の不安を和らげ、長く働く人の満足度も高められる方法です。
3つの視点で比べる
| 視点 | 1K(1人1室) | ルームシェア |
|---|---|---|
| 家賃 | 一人当たりの家賃は高くなりやすい | 一人当たりの家賃を抑えやすい |
| 初期費用・家具家電 | 部屋の数だけ初期費用と家具家電がかかる | 冷蔵庫や洗濯機などを共用でき、まとめて抑えられる |
| 光熱費 | 部屋ごとに基本料金がかかる。分け方で揉めない | 基本料金は1契約分。分け方のルールが必要 |
| プライバシー | 確保しやすい | 個室の有無で大きく変わる |
| 生活リズムの違い | 影響を受けにくい | 勤務の時間帯が違うと、お互いに休めなくなる |
| 来日直後の安心感 | 一人で不安を抱えやすい | 同じ国の仲間がいて心強い |
| 人の入れ替わり | 1人の退去で1部屋が空くだけ | 1人が抜けると、残る人の負担や空き部屋の扱いが問題になる |
| 物件の探しやすさ | 単身向けの物件は数が多い | 複数人での入居を認める物件が限られる |
| 管理の手間 | 物件の数が増える | 同居人どうしのトラブルへの対応が増える |
費用の例:3名を受け入れる場合
次の金額は、考え方を示すための例です。実際の家賃や初期費用は、地域や物件によって大きく変わります。
| 項目 | 1Kを3部屋 | 3LDKでルームシェア |
|---|---|---|
| 月の家賃(例) | 45,000円×3部屋=135,000円 | 95,000円 |
| 一人当たりの家賃 | 45,000円 | 約31,700円 |
| 冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ | 3台ずつ | 1台ずつ |
| 電気・ガス・水道の基本料金 | 3契約分 | 1契約分 |
| インターネット | 3契約分(無料の物件を除く) | 1契約分 |
この例では、ルームシェアのほうが月の家賃で4万円ほど、家具家電や光熱費の基本料金でもさらに費用を抑えられます。ただし、ルームシェアで1人が退職して空き部屋が出ると、その分の家賃を誰が負担するかという問題が起こります。家具家電の考え方は家具・家電はどこまで用意する?最低限そろえたい生活用品リストで解説しています。
特定技能の借上げでは、本人負担は「人数で割った額」まで
特定技能外国人に借上げの社宅を用意する場合、本人に負担してもらえる家賃は、会社が払う家賃などを住む人数で割った額までとされています。ルームシェアにすると一人当たりの家賃が下がるため、本人の負担も軽くなります。本人負担の決め方は外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルール、借上げと本人契約の違いは借上げ社宅と本人契約、どちらを選ぶ?費用・手間・退去時の違いをご覧ください。
ケース別の選び方
| ケース | 向いている形 | 理由 |
|---|---|---|
| 海外から初めて来日する、同じ国の人が複数いる | ルームシェア | 来日直後の不安を仲間と支え合える。費用も抑えられる |
| 勤務の時間帯がばらばら(夜勤と日勤など) | 1K | 生活リズムの違いによるストレスを避けられる |
| 国籍や宗教、生活習慣が違う人どうし | 1K、または個室のあるルームシェア | 食事やお祈りの時間など、生活習慣の違いに配慮しやすい |
| 日本での生活が長い、技術職などで給料が高め | 1K | 本人がプライバシーを重視することが多い |
| 男女のスタッフがいる | 男女で分ける | 男女のルームシェアは避けるのが一般的 |
| 職場の周りに単身向けの物件しかない | 1K | ルームシェアができる物件が見つからない |
職場の周りにどんな物件があるかによって、選べる形が決まってしまうこともあります。受入れの前に確認しておきたいことは受入れ前に確認したい職場周辺の住環境|物件が少ない地域の見極め方で解説しています。
ルームシェアを選ぶときの条件
- 人数分の個室がある。相部屋は費用を抑えられますが、不満が出やすくなります。できるだけ個室を用意しましょう。
- 勤務の時間帯が近い人どうしで組む。夜勤の人と日勤の人が同じ部屋になると、お互いに休めなくなります。
- 共用部分のルールを決める。掃除の当番、ゴミ出し、光熱費の分け方、来客のルールを入居の日に決めておきます。
- 相談の窓口をはっきりさせる。同居人どうしのトラブルは、本人から言い出しにくいものです。定期的に一人ずつ話を聞く機会をつくりましょう。
ルームシェアでは、生活音のトラブルも起きやすくなります。音の苦情への対応は住まいの騒音の苦情を受けたとき|聞き取りから改善までで解説しています。
ルームシェアから1Kへ切り替えるタイミング
来日直後はルームシェアで始め、次のようなタイミングで1Kへの切り替えを考えると、費用と定着のバランスを取りやすくなります。
- 本人から「一人で住みたい」と相談があったとき。不満がたまる前に、選択肢を示しましょう。進め方は外国籍スタッフから「引っ越したい」と言われたら|支援担当者がやることを参照。
- 社宅の契約の更新の時期。更新料がかかる前に、住まいの形を見直す機会になります。社宅の更新手続き|2年ごとの更新料と在留期限の確認も参照。
- 同居人が退職や帰国で抜けたとき。新しい人を入れるか、残った人を1Kに移すかを考えます。
- 在留資格が変わったとき。特定技能2号への移行や、家族の呼び寄せが決まったときは、家族で住める住まいへの住み替えも考えます。
住まいの形を決めるときのチェックリスト
- ☐ 受け入れる人数と、男女の内訳を確認した
- ☐ 一人ひとりの勤務の時間帯を確認した
- ☐ 国籍や生活習慣の違いを確認した
- ☐ 1Kとルームシェアの費用を、家賃・初期費用・家具家電・光熱費で比べた
- ☐ ルームシェアの場合、人数分の個室と広さの基準を確認した
- ☐ 共用部分のルールと、光熱費の分け方を決めた
- ☐ 1人が抜けたときの家賃の負担と空き部屋の扱いを決めた
- ☐ 1Kへの切り替えのタイミングと条件を、社宅のルールで決めた
まとめ
- ルームシェアは費用を抑えやすく、来日直後の安心感もある。1Kはプライバシーを守りやすく、生活リズムの違いに強い
- 3名の例では、ルームシェアのほうが家賃・家具家電・光熱費の基本料金をまとめて抑えられる
- 勤務の時間帯がばらばら、生活習慣が違う、日本での生活が長い、といった場合は1Kが向いている
- ルームシェアでは、人数分の個室、勤務の時間帯が近い人どうしの組み合わせ、共用部分のルールが大切
- 最初はルームシェア、定着したら1Kへ、という段階的な切り替えも選択肢になる
住まいの形の向き不向きは、スタッフ一人ひとりの事情によって変わります。本人の希望も聞きながら、無理のない形を選んでください。