段階3 住まいの確保

社宅の退去の立ち会い|原状回復の費用で揉めないための確認

外国籍スタッフの社宅で、退去のときに最も揉めやすいのが原状回復の費用です。「壁の傷は入居前からあった」「この汚れは普通に使っていてもつくはず」といった言い分が食い違ったり、本人が帰国したあとに高額な請求が届いたりすることがあります。こうしたトラブルの多くは、退去の立ち会いの進め方で防ぐことができます。

この記事では、社宅の退去の立ち会いの前に準備すること、当日に確認すること、そして費用の負担の考え方と精算の注意点を解説します。原状回復の基本的な考え方は外国籍スタッフの住まいのトラブル対応|騒音・ゴミ・退去時の原状回復でもまとめています。

結論:入居時の記録を持って立ち会い、その場では費用に同意しない

退去の立ち会いで大切なのは、入居時の部屋の写真や記録を持って行き、一つずつ照らし合わせることです。入居前からあった傷か、住んでいる間についた傷かを、記録で確かめられるようにしておきます。

そして、その場で費用の書類にサインせず、見積もりを受け取ってから内容を確認することが基本です。特に外国籍スタッフ本人だけで立ち会うと、内容を十分に理解しないまま同意してしまうことがあるため、支援担当者が同席しましょう。

立ち会いの前に準備すること

準備 内容
入居時の記録をそろえる 入居時の写真、チェックシート、それまでの修理の記録を用意する
契約書を確認する 原状回復の特約(ハウスクリーニング費用を借主の負担とするなど)があるかを確認する
荷物をすべて出す 家具や家電、粗大ゴミを、立ち会いの日までに処分・搬出しておく
掃除をしておく 水回り、キッチンの油汚れ、換気扇、窓のサッシなどを掃除しておく
鍵をそろえる 入居時に渡した鍵がすべてそろっているか確認する
同席する人を決める 本人、支援担当者、契約者である会社の担当者のうち、誰が立ち会うかを決める

入居時の記録がないと、傷がいつついたのかを示せず、借主の負担とされやすくなります。記録の作り方は入居時の部屋の写真記録とチェックシートの作り方、鍵の管理は社宅の鍵の管理|合鍵・紛失・入居者が替わるときの交換で解説しています。

立ち会いの当日に確認すること

  • 一か所ずつ一緒に見る。管理会社の担当者が指摘した傷や汚れを、その場で一緒に確認します。
  • 入居時の写真と照らし合わせる。入居前からあった傷であれば、写真を見せて伝えます。
  • 指摘された箇所を写真に撮る。こちらでも記録を残しておくと、あとで見積もりを確認するときに役立ちます。
  • 費用の負担の考え方を聞く。なぜ借主の負担になるのか、理由を説明してもらいます。
  • その場でサインしない。確認書へのサインを求められても、費用に同意する内容であれば、見積もりを確認してから返事をします。

本人だけで立ち会わせない

外国籍スタッフ本人だけで立ち会うと、日本語での説明を理解しきれないまま、確認書にサインしてしまうことがあります。帰国の直前で急いでいる場合は特に注意が必要です。会社名義の借上げ社宅であれば、契約者である会社の担当者か支援担当者が立ち会いましょう。

費用の負担の考え方

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、普通に暮らしていてつく傷みや、時間がたつことによる劣化は貸主の負担、借主の不注意や故意でついた傷は借主の負担とする考え方が示されています。

貸主の負担になりやすい例 借主の負担になりやすい例
家具を置いていた跡の床のへこみ 物を落としたり引きずったりしてついた床の傷
日焼けによる壁紙や畳の変色 たばこのヤニによる壁紙の変色やにおい
冷蔵庫やテレビの裏の壁の黒ずみ(電気ヤケ) 掃除をしなかったことによる、キッチンの油汚れや換気扇のこびりつき
画びょうやピンの穴 釘やネジの穴で、下地の張り替えが必要なもの
普通に使っていて生じた設備の故障 結露を放置して広がったカビやしみ

結露やカビ、キッチンの油汚れは、外国籍スタッフの社宅で特に指摘されやすい点です。日ごろの手入れの方法は外国籍スタッフの夏と冬の暮らし|熱中症・暖房・結露、料理のにおいや油の扱いは宗教や食習慣への配慮と住まい|キッチン・におい・お祈りの場所で解説しています。

経過年数の考え方

借主の負担になる傷であっても、壁紙などは年数がたつほど価値が下がるため、借主が負担する割合も小さくなる、という考え方がガイドラインで示されています。たとえば壁紙は、6年で価値がほぼなくなるとされています。長く住んでいた部屋で、壁紙の張り替え費用を全額請求されている場合は、入居していた年数を踏まえた負担になっているかを確認しましょう。

特約があるときは内容を確認する

契約書に「退去時のハウスクリーニング費用は借主の負担とする」などの特約がある場合は、その内容に沿って精算されるのが一般的です。ただし、特約の内容が明確でない場合や、借主に一方的に不利な場合は、有効かどうかが問題になることもあります。入居時に契約書の特約を確認し、本人にも伝えておきましょう。

見積もりと精算の確認

  • 内訳を確認する。どの箇所に、どんな工事を、いくらで行うのかを確認します。部屋全体の壁紙の張り替えなど、範囲が広すぎないかも見ます。
  • 立ち会いの記録と照らし合わせる。当日に指摘されなかった項目が加わっていないかを確認します。
  • 敷金との精算を確認する。敷金から差し引かれる額と、返ってくる額を確認します。
  • 納得できない点は説明を求める。管理会社に理由を聞き、それでも解決しない場合は、消費生活センターなどに相談する方法もあります。

帰国する場合の精算の注意点

本人が帰国する場合は、退去の立ち会いのあとに見積もりや精算書が届くころには、本人がすでに日本にいないことがあります。

  • 精算の窓口を決めておく。本人契約の場合、帰国後の請求や敷金の返金を誰が受けるかを、管理会社と本人とで決めておきます。
  • 口座を閉じる時期に注意する。敷金の返金を本人の口座で受ける場合、返金の前に口座を閉じてしまわないよう気をつけます。
  • 借上げ社宅の場合は社宅のルールで精算する。会社が貸主と精算したうえで、本人の負担分を社宅のルールに沿って本人と精算します。帰国前に精算を終えられるよう、退去の日を早めに決めておきましょう。

本人に負担してもらう原状回復の費用の範囲は、社宅のルールで決めておくことが大切です。規程の作り方は外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルール、帰国前の段取りは退職・帰国が決まったら|届出と住まいの退去の段取り、派遣の契約が終わったときの寮の退去は派遣契約が終わったときの寮の退去|猶予期間と次の住まいで解説しています。

退去の立ち会いのチェックリスト

  • ☐ 入居時の写真、チェックシート、修理の記録をそろえた
  • ☐ 契約書の原状回復の特約を確認した
  • ☐ 荷物と粗大ゴミをすべて出し、掃除をした
  • ☐ 入居時に渡した鍵がすべてそろっているか確認した
  • ☐ 支援担当者か会社の担当者が立ち会いに同席した
  • ☐ 指摘された箇所を一緒に確認し、写真に撮った
  • ☐ その場では費用に同意せず、見積もりを受け取った
  • ☐ 見積もりの内訳、経過年数、敷金との精算を確認した
  • ☐ 帰国する場合、帰国後の精算の窓口を決めた

まとめ

  • 退去の立ち会いには、入居時の記録を持って行き、一か所ずつ照らし合わせる
  • 本人だけで立ち会わせず、その場では費用の書類にサインしない
  • 普通に暮らしてつく傷みは貸主、不注意や故意の傷は借主の負担が基本。壁紙などは経過年数も考える
  • 見積もりの内訳と敷金の精算を確認し、納得できない点は説明を求める
  • 帰国する場合は、帰国後の精算の窓口と、口座を閉じる時期に気をつける

原状回復の費用の負担は、契約の内容や部屋の状態によって異なります。考え方の詳細は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認し、判断に迷う場合は管理会社や専門家にご相談ください。

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このガイドの運営者

不動産のイブキ(伊吹株式会社)。外国籍スタッフの住まいの手配を全国で行っています。制度は改正されることがあるため、手続きの最終確認は出入国在留管理庁などの公式情報もあわせてご確認ください。