借上げ社宅として使っている建物が売られて大家が替わったり、建物が古くなったことを理由に「建て替えるので退去してほしい」と求められたりすることがあります。外国籍スタッフが何人も住んでいる寮で立ち退きを求められると、次の住まいを探し、引っ越しや届出を進めるまでに多くの手間がかかります。
この記事では、社宅の建物が売られたとき(オーナーチェンジ)と、立ち退きを求められたときの対応を解説します。
結論:大家が替わっても契約は続く。立ち退きは条件を確かめ、時間をかけて移転を準備する
建物が売られて大家が替わっても、今の賃貸借契約は新しい大家に引き継がれるのが基本です。すぐに退去する必要はありませんが、家賃の振込先の変更は、詐欺でないことを確かめてから応じましょう。
建て替えなどで立ち退きを求められた場合も、普通の賃貸借契約であれば、大家の都合だけですぐに退去しなければならないわけではありません。通知の内容と時期、条件を確かめ、入居者の移転の準備に必要な時間と費用を考えて話し合いましょう。
建物が売られたとき(オーナーチェンジ)
| 確認すること | ポイント |
|---|---|
| 契約の引き継ぎ | 家賃や期間などの条件は、そのまま新しい大家に引き継がれるのが基本 |
| 敷金 | 預けている敷金の返還も、新しい大家に引き継がれるのが基本。引き継ぎを書面で確認する |
| 家賃の振込先 | 新しい振込先の通知は、前の大家や管理会社からの正式な書面で確認する |
| 管理会社 | 管理会社が替わるか。設備の故障などの連絡先が変わるか |
| 入居者への案内 | 連絡先が変わる場合は、入居者に本人の言語で伝える |
振込先の変更を装った詐欺に注意
「大家が替わったので、来月から家賃をこちらの口座に振り込んでください」という連絡を装った詐欺があります。振込先の変更の連絡を受けたら、元の管理会社や前の大家に、知っている連絡先から直接確認しましょう。メールや電話の案内だけで振込先を変えないことが大切です。入居者が本人契約で家賃を払っている場合も、同じ注意を伝えておきましょう。詐欺への注意は住まいの防犯と詐欺への注意|鍵・訪問販売・電話もご覧ください。
立ち退きを求められたとき
| 確認すること | ポイント |
|---|---|
| 契約の種類 | 普通の賃貸借契約か、期間が決まった定期借家契約か。定期借家なら、期間が終われば契約が終わる |
| 通知の時期 | 普通の賃貸借契約では、大家からの解約の申入れは、退去の6か月以上前に行う必要があるとされている |
| 理由 | 建て替え、取り壊し、売却など。普通の賃貸借契約では、大家からの解約には正当な理由が必要とされている |
| 条件 | 引っ越しの費用や立退料、次の物件の紹介、退去の時期の調整など |
| 原状回復 | 立ち退きの場合に、原状回復や清掃の費用をどう扱うか |
立退料は、話し合いで決まる
立ち退きを求められたときに支払われる立退料は、法律で金額が決まっているものではなく、大家の事情や借主の事情、引っ越しにかかる費用などをもとに、話し合いで決まります。社宅の場合は、新しい物件の初期費用、引っ越しの費用、入居者の通勤や生活への影響などを整理し、管理会社や専門家と相談しながら交渉しましょう。家賃の値上げを求められたときの対応は社宅の大家から家賃の値上げを求められたとき|応じる前に確認したいことと、寮費への影響で解説しています。
入居者の移転の段取り
- 入居者に早めに伝える。立ち退きが決まったら、理由と時期を本人の言語で伝え、不安を和らげます。
- 次の住まいを探す。職場への通勤や、今の生活の条件を大きく変えない物件を探します。
- 在留の手続きとの時期を確認する。在留期間の更新などの審査中の場合は、引っ越しの時期に注意します。
- 引っ越しと退去を進める。荷物の整理、退去の立ち会い、鍵の返却を行います。
- 住所の届出を行う。引っ越したら14日以内に市区町村で住所の届出を行い、会社の中の住所の情報も変えます。
引っ越しの相談を受けたときの流れは外国籍スタッフから「引っ越したい」と言われたら|支援担当者がやること、住所の届出は住所が変わったときの届出まとめ|在留カード・住民票・勤務先、会社の中で必要な手続きは外国籍スタッフが引っ越したら会社がすること|社内の住所変更・社会保険・通勤手当・入管関係の確認、審査中の引っ越しの注意は在留資格の変更・更新の審査中にできること・できないことで解説しています。
退去のときは、荷物と原状回復の確認を丁寧に
立ち退きによる退去でも、部屋に私物を残さないこと、退去の立ち会いで部屋の状態を確認することは変わりません。立ち退きの条件で原状回復の扱いを決めている場合は、その内容を立ち会いの前に確認しておきましょう。退去の立ち会いは社宅の退去の立ち会い|原状回復の費用で揉めないための確認、荷物を残さないための準備は退去後に荷物が残されないように|寮・社宅の残置物の扱いを入居時に決めておくをご覧ください。
オーナーチェンジ・立ち退きのチェックリスト
- ☐ 大家が替わった場合、契約と敷金が引き継がれることを書面で確認した
- ☐ 家賃の振込先の変更を、知っている連絡先から直接確認した
- ☐ 管理会社や連絡先が変わる場合、入居者に伝えた
- ☐ 立ち退きを求められた場合、契約の種類と通知の時期を確認した
- ☐ 理由と、引っ越しの費用や立退料などの条件を確認した
- ☐ 入居者に、立ち退きの理由と時期を本人の言語で伝えた
- ☐ 在留の手続きと引っ越しの時期が重ならないか確認した
- ☐ 引っ越し後の住所の届出と、会社の中の手続きを済ませた
まとめ
- 建物が売られて大家が替わっても、今の契約と敷金は新しい大家に引き継がれるのが基本
- 家賃の振込先の変更は、詐欺でないことを直接確認してから応じる
- 普通の賃貸借契約では、大家からの解約には正当な理由と、退去の6か月以上前の申入れが必要とされている
- 立退料や引っ越しの費用は話し合いで決まるため、移転にかかる費用を整理して交渉する
- 入居者に早めに伝え、次の住まい探しと引っ越し後の届出まで段取りを組む
立ち退きの扱いや立退料は、契約の内容や個々の事情によって判断が大きく変わります。立ち退きを求められた場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。