制度・法改正

育成就労の転籍と住まい|転籍が認められる条件と引っ越しの準備

2027年4月1日に始まる育成就労制度の大きな特徴の一つが、一定の条件のもとで、本人の希望による「転籍」(職場を変えること)が認められることです。これまでの技能実習では、原則として職場を変えることができませんでした。転籍が認められると、受入れ企業や支援機関は、人材の定着のための取組みとあわせて、転籍にともなう住まいの対応も考えておく必要があります。

この記事では、育成就労の転籍が認められる条件と転籍の流れ、そして前の職場の寮からの退去や、新しい職場での住まいの準備について解説します。

結論:転籍は「住まいの移動」をともなうことが多い。退去と入居の段取りを事前に決めておく

育成就労の転籍には、本人の意向による転籍と、やむを得ない事情による転籍があります。どちらの場合も、職場が変わると住まいも移ることが多く、前の職場が用意した寮からの退去と、新しい職場での住まいの確保が必要になります。

転籍の時期は、職場の都合ではなく本人の申出や事情によって決まります。寮の規程に、転籍のときの退去の猶予期間や費用の扱いを書いておくこと、新しく受け入れる側は、住まいをすぐに用意できる準備をしておくことが大切です。

本人の意向による転籍の条件

条件 内容
同じ職場で働いた期間 分野ごとに定められた期間(1年または2年)を超えていること。2年の分野でも、受入れ企業の判断で1年に短くできる
技能 分野ごとに定められた水準の技能の試験(技能検定の基礎級など)に合格していること
日本語の能力 分野ごとに定められた水準の日本語の試験に合格していること
業務の区分 同じ業務の区分の中での転籍であること。別の分野や業務の区分への転籍は認められない
転籍先 転籍先が一定の要件を満たしていること。転籍先は、前の受入れ企業に初期費用の一部を支払う

転籍先が前の受入れ企業に支払う額は、前の職場で働いた期間に応じて決まる仕組みが設けられる予定です。また、転籍の仲介に民間の職業紹介事業者は関われず、監理支援機関やハローワークなどが調整に関わることが想定されています。

やむを得ない事情による転籍

本人の意向による転籍とは別に、次のような事情がある場合は、働いた期間などの条件を満たしていなくても転籍が認められる方向です。

  • 受入れ企業の倒産や廃業
  • 賃金の不払い、労働条件の違反
  • 暴力やハラスメントなどの人権侵害
  • 受入れ企業の認定の取消しや行政処分

すぐに住まいを離れる必要があるときもある

暴力やハラスメントが原因の転籍では、本人の安全のために、職場が用意した寮からすぐに離れる必要があることがあります。転籍先が決まるまでの一時的な住まいを、監理支援機関などと連携して確保しましょう。一時的な宿泊先の選び方は入国日に住まいが間に合わないとき|一時的な宿泊先の選び方と注意点で解説しています。

転籍の流れ

  1. 本人が転籍の希望を申し出る。
  2. 転籍先を探す。本人が探すほか、監理支援機関などが調整や紹介を行う。
  3. 転籍先の要件を確認する。
  4. 転籍先で新しい育成就労計画の認定を受け、在留の手続きを行う。
  5. 前の受入れ企業と転籍先で、引き継ぎと費用の精算を行う。

制度の細かな運用は、施行に向けて順次示されています。転籍の手続きの具体的な内容は、出入国在留管理庁や外国人育成就労機構の最新の情報を確認してください。

転籍にともなう住まいの対応

前の職場の寮からの退去

決めておくこと 内容
退去の猶予期間 転籍が決まってから、いつまで寮に住めるか。転籍先の住まいの準備が整うまでの期間を考える
猶予期間中の寮費 前の職場を離れたあとも住む場合の寮費の扱い
引っ越しの費用 誰が負担するか。前の受入れ企業と転籍先、本人の間で話し合って決める
原状回復と鍵の返却 退去の立ち会いで部屋の状態を確認し、鍵を受け取る
備品の扱い 寮に備え付けた家具や家電を置いていくか、持っていくか

転籍は、前の受入れ企業にとっては残念なことかもしれません。しかし、退去を急がせたり、必要以上の費用を求めたりすることは、本人の生活を不安定にし、トラブルの原因になります。寮の規程に転籍のときの扱いをあらかじめ書いておき、規程に沿って進めましょう。規程の作り方は外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルールで解説しています。

転籍先での住まいの確保

転籍で人材を受け入れる側は、新しい職場の近くで住まいを用意する必要があります。転籍の時期は急に決まることもあるため、すぐに入居できる物件の当てを持っておくと安心です。国内で働いている人を受け入れるときの住まいの準備は国内転職の特定技能外国人を受け入れるとき|在留資格変更と引っ越しの進め方と共通する点が多くあります。

引っ越したら、本人は14日以内に新しい住所の届出をします。住所の届出は住所が変わったときの届出まとめ|在留カード・住民票・勤務先、引っ越しの進め方は外国籍スタッフから「引っ越したい」と言われたら|支援担当者がやることで解説しています。

借上げ社宅の契約への影響

会社名義の借上げ社宅に住んでいた人が転籍すると、その部屋が空室になります。次に受け入れる人がすぐにいない場合は、解約するか、空室のまま借り続けるかを判断しなければなりません。転籍の可能性も考えて、解約の予告期間や短期解約の違約金を確認しておきましょう。契約の期間の考え方は在留期間と社宅の契約期間の合わせ方|2年契約と在留期限のずれへの備えで解説しています。

住まいの満足度は、転籍を防ぐ要素にもなる

転籍の理由は、給料や仕事の内容だけではありません。住まいの狭さや、同居のストレス、通勤の大変さなども、職場を変えたいと考えるきっかけになります。住まいの環境を整えることは、人材の定着にもつながります。育成就労での住まいの基準は育成就労制度で住居の確保はどう変わる?2027年4月の開始前に確認したいこと、技能実習からの移行期の寮の見直しは技能実習から育成就労への移行期|寮・社宅の見直しポイントをご覧ください。

転籍に備えるチェックリスト

  • ☐ 本人の意向による転籍の条件と、分野ごとの期間を確認した
  • ☐ やむを得ない事情による転籍の場合の、一時的な住まいの確保の方法を決めた
  • ☐ 寮の規程に、転籍のときの退去の猶予期間と寮費を書いた
  • ☐ 引っ越しの費用の負担について、話し合いの進め方を決めた
  • ☐ 借上げ社宅の解約の予告期間と違約金を確認した
  • ☐ 転籍で受け入れる場合に、すぐに入居できる住まいの当てを持っている
  • ☐ 引っ越しのあとの住所の届出を本人に伝えた

まとめ

  • 育成就労では、同じ職場で一定期間(分野ごとに1年または2年)働き、技能と日本語の条件を満たせば、本人の意向で転籍できる
  • 暴力やハラスメント、賃金の不払いなどやむを得ない事情がある場合は、期間の条件を満たさなくても転籍が認められる方向
  • 転籍は住まいの移動をともなうことが多い。退去の猶予期間、寮費、引っ越しの費用の扱いを規程で決めておく
  • 受け入れる側は、すぐに入居できる住まいの当てを持っておく
  • 住まいの満足度は、転籍を防ぐ要素にもなる

育成就労の制度の運用は、施行に向けて順次示されています。最新の情報は、出入国在留管理庁や厚生労働省、外国人育成就労機構の発表でご確認ください。

このガイドの運営者

不動産のイブキ(伊吹株式会社)。外国籍スタッフの住まいの手配を全国で行っています。制度は改正されることがあるため、手続きの最終確認は出入国在留管理庁などの公式情報もあわせてご確認ください。