技能実習制度に代わる育成就労制度が、2027年4月1日に始まります。受入れの仕組みが変わるなかで、「住まいの基準はどうなるのか」「今の寮はそのまま使えるのか」と気になっている支援担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、育成就労制度で示されている住まいの基準と、特定技能1号との違いを整理したうえで、転籍や特定技能への移行によって住まいの準備がどう変わるかを解説します。
結論:寝室の基準は4.5㎡。ただし先を見据えて選ぶ
公表されている育成就労制度の運用要領では、受入れ企業が用意する宿泊施設について、寝室を1人当たり4.5㎡以上確保することなどが求められています。これは技能実習と同じ水準で、特定技能1号の住居確保支援で求められる「居室1人当たり7.5㎡以上」とは別の基準です。
ただし、育成就労は特定技能1号への移行を前提とした制度で、本人の意向による転籍も一定の条件で認められます。今の基準を満たすだけでなく、3年後の移行や、途中の転籍による入れ替わりまで見据えて住まいを選ぶことが、これまで以上に大切になります。
育成就労制度のおさらい
住まいの話に入る前に、技能実習からの主な変更点を確認しておきます。
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 目的 | 技能の移転による国際貢献 | 人材の育成と確保 |
| 期間 | 最長5年 | 原則3年。特定技能1号の水準まで育成する |
| 本人の意向による転籍 | 原則できない | 同じ業務区分で、分野ごとに定められた期間(1〜2年)を超えて働き、技能と日本語の要件を満たせば可能 |
| 受入れを支える機関 | 監理団体 | 監理支援機関 |
転籍が認められるまでの期間は、分野ごとに1年または2年と定められます。制度の検討段階では、農業や宿泊などは1年、建設や外食業などは2年とする案が示されていました。受け入れる分野の期間は、最新の分野別運用方針で確認してください。
育成就労で示されている住まいの基準
宿泊施設の設備の基準
公表されている運用要領では、宿泊施設について次のような基準が示されています。
- 寝室は1人当たり4.5㎡以上(床の間や押入れなど、実際に使えない部分は除いて計算)
- 一人ひとりの私物を収納できる設備がある
- 寝室に、部屋の広さの7分の1以上の採光ができる窓がある
- 暖房設備がある
技能実習で使っていた寮をそのまま使う場合でも、育成就労の基準をあらためて満たしているか確認する必要があります。
特定技能1号との違い
| 項目 | 育成就労 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 広さの基準 | 寝室1人当たり4.5㎡以上 | 居室1人当たり7.5㎡以上 |
| 住まいを用意する立場 | 受入れ企業が宿泊施設を確保する | 受入れ機関(または委託を受けた登録支援機関)が住居確保を支援する |
| 本人に負担してもらう費用 | 借上げの場合は、家賃(管理費・共益費を含む)を入居人数で割った額まで。自己所有の場合は合理的な額 | 同様の考え方 |
借上げの場合は、どちらの制度でも敷金・礼金や仲介手数料などを本人に負担させることはできず、住まいの費用で受入れ側が利益を得ることも認められません。家賃や光熱費を給与から差し引く場合は、労使協定が必要です。
住まいの準備で変わる3つのこと
1. 3年後の特定技能への移行を見据える
育成就労を終えて特定技能1号へ移行すると、住まいには特定技能の基準が求められます。寝室4.5㎡を前提に相部屋で用意した住まいは、7.5㎡の基準を満たさない可能性があり、移行のタイミングで部屋割りの変更や引っ越しが必要になることも考えられます。
移行時の住まいの扱いについては、今後の運用もあわせて確認が必要です。長く働いてもらう前提なら、最初から一人当たりの広さに余裕のある住まいを選んでおくと、移行時の負担を減らせます。広さの計算の考え方は複数名を同時に受け入れるときの住まい|ルームシェアの広さと契約の注意点で解説しています。
2. 転籍で住まいの入れ替わりが増える
本人の意向による転籍が認められることで、1〜2年で別の会社へ移る人が出てきます。住まいの側から見ると、入居から1〜2年での退去が増えるということです。
借上げ社宅では、短期解約の違約金や解約予告の期間が負担になることがあります。また、退去後に次の入居者がすぐに決まらないと、空室の家賃がかかります。契約の段階で解約の条件を確認しておくこと、入居者が入れ替わる前提で住まいを管理することが大切です。解約条件の確認のポイントは派遣会社が外国籍スタッフの寮・社宅を用意するときの費用と注意点でもまとめています。
3. 転籍で受け入れる側は、短期間で住まいが必要になる
反対に、転籍してくる人を受け入れる側では、前の会社の寮を出る時期に合わせて住まいを用意する必要があります。前の住まいの退去日と、新しい職場で働き始める日を調整する流れは、特定技能の転職者を受け入れるときとよく似ています。進め方は国内転職の特定技能外国人を受け入れるとき|在留資格変更と引っ越しの進め方が参考になります。
2027年4月までに確認しておきたいこと
- ☐ 今使っている寮・社宅が、寝室の広さ、収納、採光、暖房の基準を満たしているか
- ☐ 特定技能へ移行したときに、同じ住まいで7.5㎡の基準を満たせるか
- ☐ 宿泊費の金額の根拠(借上げの費用や入居人数)を書面で説明できるか
- ☐ 宿泊費や光熱費を給与から差し引く場合の労使協定が整っているか
- ☐ 借上げ社宅の解約予告期間と短期解約の違約金を把握しているか
- ☐ 転籍で人が入れ替わったとき、次の入居者の手配や退去の手順を決めているか
技能実習から育成就労へは、施行後も一定の移行期間が設けられます。今受け入れている人がどちらの制度で働くのかによって必要な対応が変わるため、受入れ企業ごとに整理しておきましょう。
まとめ
- 育成就労制度は2027年4月1日に始まり、技能実習制度は移行期間を経て廃止される
- 宿泊施設は、寝室1人当たり4.5㎡以上、収納、採光、暖房などの基準を満たす必要がある
- 特定技能1号の「居室1人当たり7.5㎡以上」とは別の基準。移行を見据えるなら広さに余裕のある住まいを選ぶ
- 本人の意向による転籍で、1〜2年での入れ替わりが増える。解約条件の確認と、入れ替わり前提の管理が大切
- 宿泊費は実費を入居人数で割った額までが基本。給与から差し引くには労使協定が必要
育成就労制度の細目は、今後も運用要領や分野別運用方針の改訂によって変わる可能性があります。この記事は2026年10月時点の公表情報をもとにしています。最終的な確認は、出入国在留管理庁や厚生労働省、各分野の所管省庁の公式情報をご確認ください。