制度・法改正

永住許可の取消し制度の新設|税金・社会保険料の未納が在留に影響する

派遣会社や受入れ企業で働く外国籍スタッフの中には、「永住者」の在留資格を持つ人も多くいます。永住者は在留期間の更新がなく、働く仕事にも制限がないため、安定した在留資格と考えられてきました。しかし、2024年の入管法の改正で、一定の場合に永住者の在留資格を取り消せる制度が新しく設けられ、2027年4月1日から施行されます。

この記事では、永住許可の取消し制度の内容と、取消しの対象となる場合・ならない場合、そして永住者のスタッフに伝えておきたい税金や届出の注意点を解説します。

結論:「税金・社会保険料をきちんと納める」「在留カードと住所の手続きを守る」を伝える

新しい制度で取消しの理由になるのは、主に故意に税金や社会保険料を納めないこと、在留カードの更新や住所の届出など、入管法で決められた義務を守らないこと、一定の罪で拘禁刑に処せられたことの3つです。

まじめに働き、税金や社会保険料を納め、手続きを守っている人が、この制度で取消しになることは想定されていません。ただ、住民税の納め方や在留カードの更新を知らずにいると、思わぬ形で問題になることもあります。支援担当者や派遣会社から、基本的なことを改めて伝えておきましょう。

取消しの理由になること

取消しの理由 内容
故意に公租公課を納めない 税金(所得税・住民税など)や社会保険料(国民健康保険料・国民年金保険料など)を、支払う義務があると分かっていながら、あえて納めない
入管法上の義務を守らない 正当な理由なく、在留カードの有効期間の更新や、なくしたときの再交付の申請をしない、住所の届出をしない、在留カードを携帯・提示しない、など
一定の罪で拘禁刑に処せられる 窃盗、詐欺、傷害などの一定の罪で拘禁刑に処せられた場合。執行猶予がついた場合も含まれる

取消しの対象になっても、多くの場合は、すぐに日本を離れなければならないわけではありません。原則として、法務大臣の判断で「定住者」などの別の在留資格に変更されることが想定されています。ただし、引き続き日本に在留することが適当でないと判断された場合は、在留資格が取り消されることもあります。

「故意に納めない」にあたる場合、あたらない場合

出入国在留管理庁は、制度の考え方を示すガイドラインを公表しています。それによると、「故意に納めない」とは、支払う義務を知りながら、あえて支払わない場合をいいます。

あたる可能性がある例 あたらないとされる例
支払う力があるのに、督促を受けても納めない 病気、災害、失業など、やむを得ない事情で納められない
納める意思がないことが明らかな状態が続いている 督促に応じて支払う意思を示し、分けて納める約束や猶予を受けている

判断は、滞納の様子やいきさつ、その後の支払いの状況や生活の状況などを総合的に見て行われるとされています。払えないときは放っておかず、市区町村などの窓口に相談して、分けて納めるなどの手続きをとることが大切です。

家賃の滞納は「公租公課」ではない

公租公課は、税金や社会保険料のことで、家賃や携帯電話の料金、ローンの返済は含まれません。ただし、家賃の滞納は、住まいを失ったり、次の部屋探しが難しくなったりする原因になります。お金の問題は、早めに相談するよう伝えておきましょう。家賃の滞納への対応は外国籍スタッフの家賃滞納が起きたとき|原因の聞き取りと支払いの立て直しで解説しています。

永住者のスタッフに伝えておきたいこと

住民税の納め方

住民税は、前の年の収入をもとに計算され、翌年に納めます。会社を辞めたあとや、転職の間に給料からの天引きが止まると、自分で納める「普通徴収」に切り替わり、納付書が自宅に届きます。この納付書を見落として、知らないうちに滞納になっていることがあります。

  • 退職や転職のときは、住民税の納め方が変わることを伝える
  • 役所から届いた手紙は、内容が分からなければ必ず誰かに見てもらうよう伝える
  • 引っ越したら住所の届出をして、納付書や督促が新しい住所に届くようにする

住民税の仕組みは外国籍スタッフの住民税|2年目の手取りと帰国時の納税で解説しています。

国民健康保険と国民年金

会社の社会保険に入っていない期間(派遣の仕事と仕事の間など)は、国民健康保険と国民年金に入り、保険料を納める必要があります。派遣の契約が切れたあと、手続きをしないまま未納になっていることがあるため、仕事の切れ目には手続きを確認するよう伝えましょう。

在留カードの有効期間の更新

永住者は在留期間の更新はありませんが、在留カードそのものには有効期間があり、期限の前に更新の申請が必要です。在留期間の更新がないため、カードの有効期間を忘れてしまいがちです。表面に書かれた有効期間を一緒に確認しておきましょう。在留カードの見方は在留カードの見方|就労制限・在留期限・住所欄で確認すること、なくしたときの手続きは在留カードをなくしたとき|再交付の手続きと住まいへの影響で解説しています。

住所の届出

引っ越したら、14日以内に新しい住所の市区町村で転入の届出をします。届出をしないままにしておくことは、入管法上の義務を守っていないことになります。社宅の入れ替えや住み替えのときは、届出まで支援担当者が確認しましょう。届出の方法は住所が変わったときの届出まとめ|在留カード・住民票・勤務先で解説しています。

派遣会社・受入れ企業ができること

  • 制度の内容を正しく伝える。不安をあおるのではなく、「きちんと納めて手続きを守っていれば心配はいらない」ことを伝えます。
  • 仕事の切れ目に手続きを案内する。派遣の契約が終わったときに、住民税や国民健康保険、国民年金の手続きを案内します。
  • 役所からの手紙を一緒に読む。本人が日本語の手紙を理解できないときに、相談できる窓口をつくっておきます。
  • 在留カードの有効期間を一覧で管理する。永住者のスタッフも含めて、カードの有効期間を管理し、早めに声をかけます。

派遣で受け入れるときの在留資格の確認は派遣で外国籍スタッフを受け入れるときの在留資格の確認|働ける範囲と注意点で解説しています。また、永住者や定住者のスタッフの部屋探しで入居審査に見られる点は永住者・定住者の派遣スタッフの部屋探し|入居審査で見られることをご覧ください。

永住者のスタッフへの案内のチェックリスト

  • ☐ 2027年4月1日から永住許可の取消し制度が始まることを伝えた
  • ☐ 税金や社会保険料を納められないときは、窓口に相談するよう伝えた
  • ☐ 退職や転職のときに、住民税の納め方が変わることを伝えた
  • ☐ 仕事の切れ目に、国民健康保険と国民年金の手続きを案内した
  • ☐ 在留カードの有効期間を確認し、更新の時期を伝えた
  • ☐ 引っ越したら14日以内に住所の届出をするよう伝えた
  • ☐ 役所からの手紙を相談できる窓口をつくった

まとめ

  • 2024年の入管法の改正で、永住者の在留資格を取り消せる制度が設けられ、2027年4月1日に施行される
  • 主な理由は、故意に税金や社会保険料を納めないこと、在留カードや住所の手続きなどの義務を守らないこと、一定の罪で拘禁刑に処せられること
  • 病気や失業などやむを得ない事情がある場合や、分けて納める手続きをとっている場合は、「故意」にあたらないとされている
  • 取消しの対象になっても、多くの場合は定住者などの在留資格に変更されることが想定されている
  • 住民税の納め方、仕事の切れ目の保険と年金、在留カードの有効期間、住所の届出を、改めて伝えておく

制度の運用やガイドラインの内容は、今後変わることがあります。最新の情報は、出入国在留管理庁のウェブサイトでご確認ください。

このガイドの運営者

不動産のイブキ(伊吹株式会社)。外国籍スタッフの住まいの手配を全国で行っています。制度は改正されることがあるため、手続きの最終確認は出入国在留管理庁などの公式情報もあわせてご確認ください。