会社の名義で借りている社宅に住む外国籍スタッフから、「会社を辞めても、この部屋に住み続けたい」「永住者になったので、自分の名義で借りたい」と相談されることがあります。慣れた住まいを離れずに済めば、本人の負担は小さくなり、会社にとっても退去や原状回復の手間が減ります。
ただし、会社名義の契約を本人名義に切り替えるのは、単純な名前の書き換えではないことが多く、貸主の承諾や入居審査が必要になります。この記事では、会社名義から本人名義への切り替えの進め方と、注意したい点を解説します。
結論:切り替えは「新しい契約」と考え、貸主の承諾と入居審査、費用の区切りを先に確認する
会社名義から本人名義への切り替えは、多くの場合、今の契約をいったん終わらせ、本人と新しく契約し直す形になります。そのため、貸主の承諾と、本人の入居審査が必要です。
あわせて、会社が預けた敷金の精算、原状回復の費用をどの時点で区切るか、会社が用意した家具・家電の扱いを決めておくことが、あとのトラブルを防ぐポイントです。
切り替えを相談されやすい場面
| 場面 | 確認したいこと |
|---|---|
| 退職して、近くの別の会社に転職する | 転職先が決まっているか。在留資格の手続きの状況 |
| 退職して、次の仕事を探す | 収入の見込みと在留期間。家賃を払い続けられるか |
| 永住者や定住者になり、社宅の対象から外れる | 社宅規程で、社宅を使える人の条件がどうなっているか |
| 会社が社宅の制度を見直す | 入居者に、本人名義で住み続けるか、ほかの住まいに移るかを選んでもらう |
特定技能のスタッフが退職して転職先を探すときの住まいと在留の考え方は特定技能のスタッフが退職して転職先を探すとき|次の会社が決まるまでの住まいと在留、退職・帰国のときの届出と退去は退職・帰国が決まったら|届出と住まいの退去の段取りで解説しています。
切り替えのときに確認すること
| 確認すること | ポイント |
|---|---|
| 貸主の承諾 | 本人名義での契約を貸主が認めるか。管理会社を通して早めに確認する |
| 入居審査 | 本人の収入、勤務先、在留期間などで審査される。退職の直後は通りにくいことがある |
| 保証会社 | 本人名義で保証会社の審査を受け直すことが多い。緊急連絡先も必要になる |
| 敷金と精算 | 会社が預けた敷金をどう精算するか。そのまま本人の敷金に振り替えられるか |
| 原状回復の区切り | 切り替えの時点で部屋の状態を確認し、それまでの傷や汚れを誰が負担するかを決める |
| 家具・家電と鍵 | 会社の備品を本人に譲るか、引き揚げるか。鍵の本数と受け渡し |
| ライフライン | 電気・ガス・水道・インターネットの名義を、本人に切り替える |
入居審査で必要な書類は外国籍の方の入居審査で必要な書類と、審査に通りやすくする準備、審査に通らなかったときの対処は保証会社の審査に落ちたときの対処法|外国籍スタッフの部屋探しをご覧ください。
会社や担当者が、本人の連帯保証人にならない
本人名義の審査が通りにくいときに、「会社が保証人になってくれれば」と頼まれることがあります。退職したスタッフの保証人に会社や担当者がなると、本人が家賃を払えなくなったときに、会社や担当者が支払いを求められることになります。保証会社を使う方法を優先して考えましょう。スタッフの部屋の連帯保証人を頼まれたら|会社・担当者が保証人になるときの注意と、2020年の民法改正もご覧ください。
切り替えの進め方
- 本人の希望と事情を聞く。いつまで住みたいか、収入の見込み、在留の状況を確認します。
- 管理会社に相談する。本人名義での契約が認められるか、審査に必要な書類を確認します。
- 本人が申し込み、審査を受ける。審査の結果が出るまで、会社名義の契約の解約は待ちます。
- 部屋の状態を確認する。切り替えの日に立ち会い、それまでの傷や汚れを記録し、費用の負担を決めます。
- 会社の契約を終え、本人の契約を始める。家賃に空白や重なりが出ないよう、日付を合わせます。
- 備品と名義の整理をする。家具・家電の扱い、ライフラインの名義、鍵の受け渡しを済ませます。
切り替えが難しいときは、別の住まいを探す
貸主が本人名義での契約を認めない場合や、入居審査に通らない場合は、別の住まいを探すことになります。退職の日と退去の日の間に余裕がないと、本人が住まいを失うおそれがあるため、切り替えを相談されたら早めに管理会社に確認し、難しい場合の代わりの住まいも並行して考えましょう。退去のときの立ち会いは社宅の退去の立ち会い|原状回復の費用で揉めないための確認で解説しています。
社宅規程に、切り替えの扱いを書いておく
退職や制度の変更のときに、社宅に住み続けたいという相談は少なくありません。社宅規程に、本人名義への切り替えを認めるか、認める場合の費用の区切りや備品の扱いを書いておくと、担当者ごとに対応がぶれません。借上げ社宅と本人契約の違いは借上げ社宅と本人契約、どちらを選ぶ?費用・手間・退去時の違い、派遣スタッフの社宅の名義の考え方は派遣スタッフの社宅を借上げで用意するときの契約名義と注意点をご覧ください。
本人名義への切り替えのチェックリスト
- ☐ 本人の希望、収入の見込み、在留の状況を確認した
- ☐ 管理会社を通して、貸主が本人名義の契約を認めるか確認した
- ☐ 本人の入居審査と保証会社の審査が通った
- ☐ 審査の結果が出るまで、会社名義の契約の解約を待った
- ☐ 切り替えの日に部屋の状態を確認し、費用の負担を決めた
- ☐ 敷金の精算の方法を決めた
- ☐ 家具・家電、鍵、ライフラインの名義を整理した
- ☐ 会社や担当者が、本人の連帯保証人になっていない
まとめ
- 会社名義から本人名義への切り替えは、多くの場合、新しい契約として入居審査が必要になる
- 貸主の承諾と、本人の入居審査・保証会社の審査を、会社の契約を解約する前に確認する
- 切り替えの日に部屋の状態を確認し、敷金の精算と原状回復の費用の区切りを決める
- 会社の家具・家電やライフラインの名義、鍵の扱いを整理する
- 切り替えが難しい場合に備え、代わりの住まいも並行して考える
名義の切り替えの可否や条件は、貸主や管理会社、契約の内容によって異なります。具体的な手続きは、管理会社にご確認ください。