外国籍スタッフの寮を管理していると、「パスポートを失くすといけないから会社で預かろう」「急に辞めて帰国されると困るから、通帳を管理しよう」と考える場面があるかもしれません。善意や心配から始めたことでも、こうした管理は法律で禁止されていたり、本人の自由を奪うものとして問題になったりします。
この記事では、外国籍スタッフの寮の管理で、会社がやってはいけないことと、その理由、本人から頼まれたときの対応を解説します。
結論:書類やお金は本人が管理する。会社は「預からない」「縛らない」が基本
パスポートや在留カード、通帳、キャッシュカードは、本人が自分で管理するものです。会社が取り上げたり預かったりすることは、特定技能では基準で禁止されており、ほかの在留資格でも本人の自由を奪う行為として問題になります。
また、退職したときの違約金を決めることや、給料の一部を強制的に貯金させることは、労働基準法で禁止されています。寮の規則も、安全のためのルールを超えて、外出や外泊、交友関係を縛るものにしないよう注意しましょう。
会社がやってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| パスポートや在留カードを取り上げる・預かる | 特定技能では、所属機関の基準で旅券や在留カードを取り上げないことが求められている。在留カードは常に持ち歩くことが法律で義務づけられている |
| 通帳やキャッシュカードを管理する | 本人の財産を本人が自由に使えなくなる。給料は本人に全額を払うのが原則 |
| 給料の一部を強制的に貯金させる | 労働基準法で、労働契約に付随して貯金をさせることは禁止されている |
| 退職したときの違約金や賠償の額を決める | 労働基準法で、違約金や損害賠償の額を前もって決めることは禁止されている |
| 保証金を取る | 特定技能では、本人や家族などから保証金を取ったり、違約金の契約を結んだりしていないことが求められている |
| 寮費を実際の費用より高く取る | 特定技能では、借上げの場合、本人から受け取れる額に上限がある。住まいで利益を得ることは認められていない |
寮が労働基準法の寄宿舎にあたる場合のルールは寮が「事業附属寄宿舎」にあたるとき|寄宿舎規則の届出と、会社が守りたい労働基準法のルール、本人に負担させてはいけない費用は特定技能の受入れにかかる費用の内訳|本人に負担させてはいけない費用、寮費を給料から差し引くときのルールは社宅の家賃を給料から差し引くとき|労使協定と課税の考え方で解説しています。
「本人が預けたいと言った」でも、会社では預からない
本人から「失くすのが心配なので預かってほしい」と頼まれることもあります。それでも、会社や担当者が預かると、返してほしいときにすぐ返せなかったり、本人が言い出しにくくなったりして、取り上げと同じ状態になるおそれがあります。部屋に鍵のかかる引き出しや小さな金庫を用意する、なくしたときの手続きを教えておくなど、本人が自分で管理できるように手伝いましょう。在留カードをなくしたときの手続きは在留カードをなくしたとき|再交付の手続きと住まいへの影響をご覧ください。
寮の規則で気をつけたい制限
| ルールの例 | 行き過ぎになりやすい例 | 見直し方 |
|---|---|---|
| 外出・外泊 | 外出や外泊に会社の許可が必要 | 安否の確認のため、外泊するときは連絡をお願いする |
| 来客 | 友人や家族の来訪を一切禁止する | 時間や宿泊のルールを決め、ほかの入居者に配慮してもらう |
| 携帯電話 | 携帯電話を持たせない、使える時間を決める | 夜の騒音への配慮をお願いするにとどめる |
| 交友関係 | 同じ国の人と会うことを禁止する | 私生活に会社は口を出さない。困りごとの相談先を伝える |
| 部屋への立ち入り | 本人の了解なく、会社の人が部屋に入る | 点検や見回りは、前もって連絡し、本人がいるときに行う |
寮規程の条文の例は外国籍スタッフ向け寮規程の条文例|派遣会社・受入れ企業がそのまま使えるひな形で紹介しています。
給料は本人の口座に、全額を払う
給料は、税金や社会保険料、労使協定で決めた寮費などを除き、全額を本人に払うのが原則です。本人の口座に振り込み、通帳やキャッシュカードは本人が持つようにしましょう。口座を作るのに手間取る場合の対処は銀行口座が作れないときの対処法|断られやすい理由と準備で解説しています。
行き過ぎた管理を防ぐために
- 寮の規則を見直す。許可制や禁止のルールが、安全のために本当に必要か、連絡のお願いで足りないかを見直します。
- 担当者に共有する。現場の担当者や寮の管理人が、善意で書類やお金を預かっていないかを確認し、ルールを共有します。
- 本人に伝える。「パスポートや在留カード、通帳は自分で持つもの」「会社が預かることはない」と、本人の言語で伝えます。
- 相談の窓口を伝える。困ったときに相談できる窓口を伝え、相談を受けたら記録を残します。
退職のときも、書類や給料で引き止めない
退職や帰国が決まったときに、書類を返さない、最後の給料を払わない、寮からすぐに追い出すといった対応は、トラブルのもとです。退職が決まったら、届出や退去の段取りを本人と一緒に確認し、最後の給料の支払い方も伝えておきましょう。退職・帰国の段取りは退職・帰国が決まったら|届出と住まいの退去の段取り、相談の記録の残し方は相談・苦情対応の記録の残し方|支援実施状況の確認に備えるをご覧ください。
寮の管理の見直しチェックリスト
- ☐ パスポートや在留カードを、会社や担当者が預かっていない
- ☐ 通帳やキャッシュカードを、会社や担当者が管理していない
- ☐ 給料の一部を強制的に貯金させていない
- ☐ 退職したときの違約金や賠償の額を決めていない
- ☐ 本人や家族から保証金を取っていない
- ☐ 寮費が実際の費用を超えていない
- ☐ 外出・外泊・来客のルールが、許可制や全面禁止になっていない
- ☐ 部屋に鍵のかかる収納があり、本人が貴重品を自分で管理できる
まとめ
- パスポートや在留カード、通帳は本人が管理するもので、会社が預からない
- 強制的な貯金、違約金や賠償の額の取り決めは、労働基準法で禁止されている
- 特定技能では、保証金の徴収や寮費で利益を得ることも認められていない
- 寮の規則は、安全のための連絡のお願いにとどめ、外出や交友関係を縛らない
- 本人から預かってほしいと頼まれても、本人が自分で管理できるよう手伝う
具体的なルールの適否は、在留資格や雇用の形、個々の事情によって判断が変わります。判断に迷う場合は、労働基準監督署や社会保険労務士、行政書士などの専門家にご相談ください。