特定技能外国人からの相談や苦情は、定期面談の場だけでなく、電話やメッセージで突然届くこともあります。その場で対応して解決したものの、記録を残していなかったために、あとで「どんな支援をしたのか」を説明できなかった、ということは少なくありません。
この記事では、相談・苦情対応の基本を整理したうえで、記録に残す項目と記載例、記録の管理で気をつけたいことを解説します。
結論:「いつ・誰から・何を・どう対応し・どうなったか」を毎回残す
相談・苦情への対応は、義務的支援の一つです。対応したら、その都度日付、相談した人、内容、対応したこと、結果を記録に残しましょう。
支援の状況についての記録は、雇用契約が終わってからも1年以上保管しておくことが求められています。記録は、定期届出の作成や在留期間更新の審査、入管からの確認に備えるための大切な資料になります。
相談・苦情対応の基本
- 仕事、日常生活、社会生活に関する相談や苦情に、本人が十分に理解できる言語で対応する
- 相談を受けたら、遅れることなく対応する
- 内容に応じて、必要な助言や指導を行う
- 行政機関などでの手続きが必要な場合は、窓口を案内し、必要に応じて同行する
- 労働関係の法令違反などを知ったときは、関係する行政機関に通報する
相談の窓口と対応できる時間帯は、支援計画に書き、事前ガイダンスや生活オリエンテーションで本人に伝えておきます。
記録に残す項目
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 受付日時 | 相談を受けた日と時間 |
| 相談者 | 本人の氏名、受入れ企業名 |
| 受付方法 | 面談、電話、メッセージアプリ、メールなど |
| 使用した言語 | 日本語、母国語、通訳の有無 |
| 分類 | 仕事、住まい、お金、健康、手続き、人間関係など |
| 相談の内容 | 本人の言葉をできるだけそのまま、事実と本人の気持ちを分けて書く |
| 対応したこと | 誰に連絡したか、どんな助言をしたか、どこへ同行したか |
| 結果 | 解決したか、継続中か。本人に結果を伝えた日 |
| 対応者 | 対応した支援担当者の名前 |
「相談の内容」は、担当者の解釈を混ぜずに書くことが大切です。たとえば「隣の人がうるさいと言っている」と「隣の部屋から夜中に音がして眠れないと本人が話した」では、あとで読み返したときの伝わり方が大きく違います。
記載例
住まいの相談の例
| 受付日時・方法 | 〇月〇日 19時頃・メッセージアプリ(母国語、通訳経由) |
|---|---|
| 分類 | 住まい(設備) |
| 相談の内容 | 3日前から部屋のエアコンが動かない。暑くて眠れない、と本人が話した |
| 対応したこと | 翌日、管理会社に修理を依頼。修理業者の訪問日を本人に伝え、当日は担当者が立ち会った |
| 結果 | 〇月〇日に修理が完了。本人に動作を確認してもらい、解決 |
職場の相談の例
| 受付日時・方法 | 〇月〇日・定期面談(対面、日本語) |
|---|---|
| 分類 | 仕事(給与) |
| 相談の内容 | 先月の給与明細の残業時間が、自分の記録より少ないように思う、と本人が話した |
| 対応したこと | 本人の了解を得て、受入れ企業の担当者に勤怠記録の確認を依頼。結果を本人と一緒に確認した |
| 結果 | 打刻漏れが1日分あり、翌月の給与で精算されることを確認。本人に説明し、解決 |
住まいの相談の振り分け方
住まいの相談は、内容によって連絡する先が変わります。
| 相談の内容 | 主な連絡先 |
|---|---|
| 設備の故障、水漏れ、鍵のトラブル | 管理会社 |
| 近隣からの苦情、近隣への不満 | 管理会社。事実を確かめてから本人と話す |
| 家賃や光熱費の金額、給与からの差し引き | 受入れ企業 |
| 同居人との関係、引っ越したい | 受入れ企業と相談し、必要なら住まいの見直し |
| ゴミの出し方、住所変更などの手続き | 市区町村の窓口。必要に応じて同行する |
近隣トラブルや設備の故障への対応は外国籍スタッフの住まいのトラブル対応|騒音・ゴミ・退去時の原状回復、引っ越しの相談は外国籍スタッフから「引っ越したい」と言われたら|支援担当者がやることで解説しています。
記録の管理で気をつけたいこと
受入れ企業との共有は内容に応じて
相談の中には、上司や職場の人間関係についての不満など、本人が受入れ企業に知られたくない内容もあります。何をどこまで受入れ企業に共有するかは、本人の了解を得てから決めましょう。勝手に伝えてしまうと、本人は二度と相談しなくなります。
ただし、法令違反の疑いがある場合や、本人の安全に関わる場合は、本人の了解がなくても関係機関に通報や相談をする必要があることがあります。
個人情報として管理する
相談の記録には、本人の健康状態や家族のこと、お金のことなど、他人に知られたくない情報が含まれます。保管する場所と見られる人を限り、メッセージアプリのやり取りも、記録に必要な部分を残したうえで適切に管理しましょう。
定期面談の記録とつなげる
定期面談で聞いた困りごとと、日頃の相談を同じ台帳で管理すると、一人ひとりの状況の流れが分かりやすくなります。面談の進め方は定期面談の進め方とチェック項目|住まい・生活の困りごとの聞き方で解説しています。
記録が役立つ場面
- 定期届出:1年分の支援の実施状況をまとめるときの元になります。詳しくは定期届出の期限と書き方|提出前に確認したいポイントをご覧ください
- 在留期間の更新:支援計画どおりに支援していることを示す資料になります。更新の準備は特定技能1号の在留期間更新|必要書類と早めに準備したいことで解説しています
- 担当者の交代:引き継ぎの資料として、本人の状況を次の担当者に正確に伝えられます
- トラブルの再発防止:同じ相談が繰り返されていないかを振り返り、住まいや職場の見直しにつなげられます
まとめ
- 相談・苦情への対応は義務的支援。本人が理解できる言語で、遅れることなく対応する
- 対応したら毎回、日付・相談者・内容・対応・結果を記録する
- 相談の内容は、担当者の解釈を混ぜず、事実と本人の気持ちを分けて書く
- 受入れ企業との共有は本人の了解を得てから。ただし法令違反や安全に関わる場合は別
- 記録は雇用契約の終了から1年以上保管し、定期届出や更新に活かす
記録の保管期間や記載事項は、運用要領の改訂で変わることがあります。最終的な確認は、出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。