段階5 就労開始後の支援

社宅の家賃を給料から差し引くとき|労使協定と課税の考え方

外国籍スタッフに社宅や寮を用意している会社の多くは、本人が負担する家賃を毎月の給料から差し引いています。手間がかからず、家賃の払い忘れも防げる便利な方法ですが、差し引くためのルールや、本人への説明、税金の扱いを正しく理解していないと、後からトラブルになることがあります。

この記事では、社宅の家賃を給料から差し引くときに必要な手続きと、特定技能での本人負担の考え方、社宅の家賃と税金の関係を解説します。

結論:「労使協定」「本人への説明」「適正な金額」の3つをそろえる

給料は、原則として全額を本人に支払わなければなりません。社宅の家賃などを差し引くには、会社と従業員の代表との間で労使協定を結んでおく必要があります。

そのうえで、いくらを、何のために差し引くのかを、本人が理解できる言語で説明し、了解を得ることが大切です。差し引く金額は、特定技能の場合は本人負担の上限を守り、税金の面でも問題のない額に設定しましょう。

給料から差し引くためのルール

ルール 内容
労使協定 給料から社宅の家賃などを差し引くには、過半数の労働者で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する人と書面で協定を結ぶ
差し引く項目 協定には、何を差し引くか(社宅・寮の家賃、光熱費など)を具体的に書く
給与明細 差し引いた項目と金額を、給与明細にはっきり示す
本人の理解 差し引く項目と金額を、本人が理解できる言語で説明しておく

税金や社会保険料のように法律で差し引くことが決められているもの以外は、労使協定がなければ給料から差し引くことはできません。外国籍スタッフを初めて受け入れる会社では、協定の有無を最初に確認しましょう。社宅のルール全体は外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルールで解説しています。

特定技能での本人負担の考え方

特定技能外国人に借上げの社宅を用意する場合、本人から受け取れる家賃は、借上げにかかる費用(管理費・共益費を含む)を入居する人数で割った額までとされています。会社が住まいの提供で利益を得ることは認められていません。敷金・礼金や仲介手数料などの初期費用は、会社の負担です。

また、特定技能では、食費や住居費など本人から受け取る費用について、本人が内容を十分に理解して合意していることが求められ、在留資格の申請では、受け取る費用の内容を説明した書面を提出します。費用の考え方は借上げ社宅と本人契約、どちらを選ぶ?費用・手間・退去時の違い、ルームシェアでの一人当たりの負担の例は社宅は1Kとルームシェア、どちらで用意する?費用と定着で比べる選び方で解説しています。

入居者の人数が変わったら、負担額も見直す

ルームシェアで同居人が退去して人数が減ると、一人当たりの負担額の計算が変わります。人数が変わったのに差し引く金額をそのままにしていると、上限を超えたり、反対に負担が少なすぎたりすることがあります。人数や家賃が変わったときは、その月から負担額を計算し直し、本人にも伝えましょう。

社宅の家賃と税金の関係

会社が社宅を貸すとき、本人から受け取る家賃が安すぎると、その差額が給料として扱われ、所得税の対象になることがあります。国税庁は、次のような考え方を示しています。

本人から受け取る家賃 税金の扱い
賃貸料相当額の50%以上 賃貸料相当額との差額は、給料として課税されない
賃貸料相当額の50%未満 賃貸料相当額との差額が、給料として課税される
無償(家賃を受け取らない) 賃貸料相当額の全額が、給料として課税される

「賃貸料相当額」は、実際の家賃ではなく、建物と土地の固定資産税の課税標準額と床面積をもとにした計算式で求めます。借上げ社宅の場合も同じ計算式を使うため、貸主から固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。計算式で求める額は、実際の家賃より低くなることが多いですが、本人の負担をかなり低くしている場合は確認しておきましょう。

住宅手当として現金で払うと、全額が給料になる

社宅を用意する代わりに、住宅手当を現金で払う場合や、本人が自分で契約した部屋の家賃を会社が負担する場合は、社宅の貸与とは扱われず、その金額は給料として課税されます。借上げ社宅にするか、本人契約に手当を出すかで、税金の扱いが変わる点も覚えておきましょう。具体的な判断は、税理士に相談してください。

本人への説明のしかた

  • 入国前に金額を伝える。給料から差し引く家賃と光熱費の金額、手元に残るおおよその額を、事前ガイダンスなどで伝えておきます。事前ガイダンスで説明すること|住まいと生活費をどう伝えるかも参照。
  • 給与明細の見方を説明する。最初の給料日に、給与明細のどこに家賃が書かれているかを一緒に確認します。
  • 変わるときは事前に伝える。家賃や人数が変わって差し引く額が変わるときは、変わる前に説明します。
  • ほかの差し引きとあわせて説明する。2年目から住民税が差し引かれ始めると、手取りがさらに減ります。家賃とあわせて説明しておくと、本人が驚かずに済みます。外国籍スタッフの住民税|2年目の手取りと帰国時の納税も参照。

給料から差し引けないとき

欠勤や仕事の減少で給料が少ない月は、家賃を差し引くと手元にほとんど残らなくなることがあります。給料から差し引けなかった分や、本人の生活が成り立たなくなる場合の扱いは、あらかじめ社宅のルールで決めておきましょう。家賃の支払いが滞ったときの対応は外国籍スタッフの家賃滞納が起きたとき|原因の聞き取りと支払いの立て直しで解説しています。

派遣会社が寮費を差し引く場合の注意点は派遣会社が外国籍スタッフの寮・社宅を用意するときの費用と注意点もあわせてご覧ください。

家賃を給料から差し引くときのチェックリスト

  • ☐ 社宅・寮の家賃を差し引くことを含めた労使協定を結んでいる
  • ☐ 特定技能の場合、本人負担が「費用÷入居人数」を超えていない
  • ☐ 本人負担の内容を、本人が理解できる言語で説明し、了解を得た
  • ☐ 給与明細に、家賃と光熱費の項目と金額をはっきり示している
  • ☐ 本人負担が賃貸料相当額の50%以上になっているか確認した
  • ☐ 入居人数や家賃が変わったときに、負担額を計算し直す流れを決めた
  • ☐ 給料から差し引けなかったときの扱いを、社宅のルールで決めた

まとめ

  • 社宅の家賃を給料から差し引くには、労使協定が必要。項目と金額を給与明細に示す
  • 特定技能の借上げ社宅では、本人負担は費用を入居人数で割った額まで。初期費用は会社の負担
  • 本人から受け取る家賃が賃貸料相当額の50%未満だと、差額が給料として課税される
  • 住宅手当として現金で払う場合は、全額が給料として課税される
  • 差し引く金額は入国前から伝え、変わるときは事前に説明する

労使協定の内容や税金の扱いは、会社の状況によって異なります。具体的な判断は、社会保険労務士や税理士にご相談ください。

次の段階 6. 届出・更新

このガイドの運営者

不動産のイブキ(伊吹株式会社)。外国籍スタッフの住まいの手配を全国で行っています。制度は改正されることがあるため、手続きの最終確認は出入国在留管理庁などの公式情報もあわせてご確認ください。