寮で暮らす外国籍スタッフの中に、ゴミの出し方や夜の騒音、無断で人を泊めるなどのルールを、何度注意しても守らない人がいることがあります。そのままにしておくと、ほかの入居者が不満をためたり、近所からの苦情が増えたりして、寮全体の暮らしに影響します。
一方で、すぐに「出て行ってもらう」と決めてしまうと、本人の生活の基盤を奪うことになり、トラブルが大きくなるおそれもあります。この記事では、寮のルールを守らない入居者への対応の進め方を解説します。
結論:理由を聞き、段階を踏んで注意し、記録を残す。退寮は最後の手段として規程に沿って
ルールを守らない理由は、ルールを理解していない、守りたくても守れない事情がある、分かっていて守らないのどれかであることが多く、それぞれ対応が違います。まず理由を聞くことから始めましょう。
そのうえで、口頭の注意、書面での注意、面談と段階を踏み、そのたびに記録を残します。退寮を求めるのは、改善が見られない場合の最後の手段とし、社宅規程や寮規程に沿って進めることが大切です。
まず理由を聞く
| 守らない理由 | 対応の例 |
|---|---|
| ルールを理解していない | 本人の言語で、具体的な場面や写真を使って説明し直す |
| 守りたくても守れない | 夜勤でゴミの日に出せない、同室の人との関係など、事情に合わせてルールや部屋割りを見直す |
| 母国の習慣との違い | 日本で問題になる理由(近所への迷惑、退去の費用など)を伝える |
| 分かっていて守らない | 段階的な注意と、守れない場合にどうなるかを伝える |
騒音の苦情を受けたときの聞き取りは住まいの騒音の苦情を受けたとき|聞き取りから改善まで、入居者どうしのトラブルへの対応は寮で入居者どうしのトラブルが起きたとき|けんか・物がなくなった・お金の貸し借りへの対応で解説しています。
段階を踏んだ注意の進め方
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 口頭での注意 | 何が問題で、どうしてほしいかを、本人の言語で具体的に伝える |
| 2. 書面での注意 | 守ってほしいルールと、改善の期限を書面にして渡す。本人の言語の訳を付ける |
| 3. 面談 | 受入れ企業や上司も同席して面談し、改善の約束を確認する |
| 4. 最終の注意 | 改善されない場合に、規程に沿ってどうなるか(部屋の移動、退寮など)を書面で伝える |
注意は担当者が行い、寮長に任せない
ルールを守らない入居者への注意や、その後の対応を決めることは、会社の担当者の役割です。寮のまとめ役(寮長)に注意を任せると、入居者どうしの関係がこじれたり、寮長が孤立したりすることがあります。寮のまとめ役(寮長)を置くとき|役割の決め方・選び方と、負担をかけすぎないための注意もご覧ください。
記録の残し方
- いつ、何があったか。ルール違反の日時と内容、誰からの苦情かを記録します。
- どう伝えたか。注意した日時、方法(口頭・書面)、使った言語、本人の反応を記録します。
- 証拠を残す。ゴミの写真や、近所や管理会社からの苦情の内容などを残します。
- 改善の様子。注意のあとに改善したかどうかも記録します。
記録の残し方は相談・苦情対応の記録の残し方|支援実施状況の確認に備えるで解説しています。
自力で追い出さない
ルールを守らないからといって、本人の了解なく鍵を替える、荷物を部屋から出す、電気や水道を止めるといった方法で退去させることは、許されません。本人の財産を侵したり、住む場所を一方的に奪ったりすることになり、会社が責任を問われるおそれがあります。退寮を求める場合も、規程に沿って期間を設け、次の住まいの見通しを立てたうえで進めましょう。寮の管理で行き過ぎになりやすいことは寮の管理で「やってはいけないこと」|パスポートの預かり・強制貯金・違約金など、外国籍スタッフの自由を守るルールをご覧ください。
退寮を求める前に確認したいこと
- 規程に退寮の定めがあるか。どんな場合に退寮を求めるか、予告の期間などが、社宅規程や寮規程に書かれているかを確認します。
- 入居時に説明していたか。ルールと、守れない場合の扱いを、本人の言語で説明していたかを確認します。
- ほかの方法はないか。部屋の移動や、ルームシェアから一人部屋への変更で解決できないか考えます。
- 次の住まいの見通し。特定技能の場合、雇用が続く間は住居の確保の支援が必要です。退寮後の住まいをどうするかを考えます。
- 専門家に相談する。判断に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士に相談します。
退寮のルールを規程に書くときは外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルール、条文の例は外国籍スタッフ向け寮規程の条文例|派遣会社・受入れ企業がそのまま使えるひな形、派遣契約が終わったときの寮の退去の猶予は派遣契約が終わったときの寮の退去|猶予期間と次の住まいをご覧ください。
ルールは「入居者と一緒に」見直す
守られないルールの中には、入居者の勤務の時間や暮らし方に合っていないものもあります。入居者の声を聞いて、ゴミ当番の決め方や共用部の使い方を見直すと、ルールが守られやすくなります。ルールを守ることが、自分たちの暮らしやすさにつながることを、入居者全員で共有しましょう。
ルールを守らない入居者への対応のチェックリスト
- ☐ ルールを守らない理由を、本人から聞いた
- ☐ ルールを本人の言語で、具体的に説明し直した
- ☐ 守れない事情がある場合、ルールや部屋割りの見直しを考えた
- ☐ 口頭、書面、面談と、段階を踏んで注意した
- ☐ 違反の内容、注意の日時と方法、改善の様子を記録した
- ☐ 鍵の交換や荷物の運び出しなど、自力での追い出しをしていない
- ☐ 退寮を求める場合、規程の定めと入居時の説明を確認した
- ☐ 退寮後の住まいの見通しを立てた
まとめ
- ルールを守らない理由は、理解不足、守れない事情、意図的のどれかであることが多い。まず理由を聞く
- 口頭、書面、面談と段階を踏んで注意し、そのたびに記録を残す
- 注意は担当者が行い、寮長に任せない
- 鍵の交換や荷物の運び出しなど、自力での追い出しはしない
- 退寮は最後の手段とし、規程に沿って、次の住まいの見通しを立てて進める
退寮の扱いは、規程の内容や個々の事情によって判断が変わります。判断に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。