寮・社宅で暮らす外国籍スタッフから、「ドアに張り紙をされた」「近所の人に怒鳴られた」「自転車を壊された」と相談を受けることがあります。近所の人との関係がこじれると、本人は毎日の暮らしに不安を感じ、仕事にも影響が出てしまいます。
こうした相談の中には、騒音やゴミなど、近所の人の困りごとが原因になっているものもあれば、国籍を理由にした嫌がらせもあります。この記事では、近所から入居者が嫌がらせを受けたときに、支援担当者が本人を守るためにできることを解説します。
結論:まず原因と事実を確かめ、記録を残す。危険があれば警察へ、住み続けるのが難しければ住み替えも
相談を受けたら、何があったのか、近所の人が困っていることがないかを確かめます。理由のある苦情であれば、改善することで関係が良くなることもあります。
一方、国籍を理由にした悪口や張り紙、物を壊すといった行為は、本人に原因があるわけではありません。日時や内容を記録し、管理会社や警察、人権相談の窓口に相談しましょう。本人の安全が守れない場合は、住み替えも選択肢になります。
苦情と嫌がらせの見分け方
| 区分 | 例 | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 理由のある苦情 | 夜の話し声がうるさい、ゴミの出し方が違う、駐輪場の使い方が悪い | 事実を確かめ、本人に伝えて改善する。近所の人に改善を報告する |
| 伝え方が強すぎる苦情 | 困りごとはあるが、怒鳴る、何度もドアをたたくなど、伝え方が強い | 会社の担当者が間に入り、今後は会社に連絡してもらうよう頼む |
| 嫌がらせ | 国籍を理由にした悪口や張り紙、物を壊す、つきまとう、脅す | 記録を残し、管理会社、警察、人権相談の窓口に相談する |
理由のある苦情への対応は住まいの騒音の苦情を受けたとき|聞き取りから改善までで解説しています。苦情が会社に届くよう、入居のときに近所へ会社の連絡先を渡しておくことも役立ちます。寮・社宅に入居したときの近所への挨拶|挨拶する範囲と伝えること、外国籍スタッフと一緒に回るときのコツもご覧ください。
本人の話だけで決めつけない、近所の人の話だけで決めつけない
本人は言葉の壁から、近所の人が何に困っているかを分かっていないことがあります。一方、近所の人も、外国籍の入居者に直接言えず、不満をためていることがあります。どちらか一方の話だけで決めつけず、管理会社にも、ほかに苦情や相談が来ていないかを確認しましょう。
本人からの聞き取りと記録
- いつ、どこで、何があったか。日時と場所、相手(分かれば部屋番号など)、言われたことやされたことを聞きます。
- 証拠を残す。張り紙や壊された物は写真に撮り、張り紙は捨てずに保管します。言われたことは、覚えているうちにメモに残してもらいます。
- 何度起きているか。一度だけか、くり返し起きているかを確認します。
- 本人の気持ちと希望。怖いと感じているか、住み続けたいか、住み替えたいかを聞きます。
- 記録を会社に残す。聞き取った内容と、会社がとった対応を記録します。
記録の残し方は相談・苦情対応の記録の残し方|支援実施状況の確認に備える、寮の入口などに防犯カメラを付けるときの注意は寮に防犯カメラを付けるとき|付けてよい場所、プライバシーへの配慮、映像の扱い方で解説しています。
相談先
| 相談先 | 相談すること |
|---|---|
| 管理会社・大家 | 同じ建物の入居者による嫌がらせの場合、相手への注意や、建物のルールでの対応を相談する |
| 警察(110番) | 物を壊された、脅された、暴力を振るわれたなど、身の危険がある場合 |
| 警察の相談窓口(#9110) | 急ぎではないが、つきまといやくり返しの嫌がらせについて相談したい場合 |
| 法務局の人権相談 | 国籍を理由にした差別的な言葉や扱いについて相談したい場合。外国語で相談できる窓口もある |
外国語で相談できる人権相談の窓口は外国籍を理由に入居を断られたとき|大家側の不安と、登録支援機関・派遣会社ができること、住まいの困りごとの相談先は住まいの困りごとの相談先|内容別の窓口と、支援担当者が外部につなぐときのコツでまとめています。
本人や担当者が、相手に直接やり返さない
嫌がらせを受けて腹が立っても、本人や担当者が相手の家に押しかけて抗議したり、言い返したりすると、トラブルが大きくなり、本人が加害者のように扱われてしまうおそれがあります。相手とのやり取りは、管理会社や警察を通して行いましょう。また、外国籍スタッフは在留への影響を心配して、警察への相談をためらうことがあります。被害を相談することで不利になることはないと伝え、必要なら担当者が付き添いましょう。同じ寮の入居者どうしのトラブルは寮で入居者どうしのトラブルが起きたとき|けんか・物がなくなった・お金の貸し借りへの対応をご覧ください。
住み替えを考えるとき
- 身の危険がある。暴力や脅しがあった場合は、早めに一時的な宿泊先を用意し、住み替えを進めます。
- 嫌がらせが続いている。管理会社や警察に相談しても改善しない場合は、本人の心の負担を考えて住み替えを検討します。
- 本人が強い不安を感じている。眠れない、家に帰りたくないなどの様子があれば、住み替えを前向きに考えます。
- 費用の負担を決める。本人に落ち度がない住み替えの費用を、本人に負担させないよう配慮します。
地域とのつながりが、嫌がらせを防ぐ力にもなる
近所に顔見知りや味方になってくれる人がいると、嫌がらせが起きにくくなり、起きたときにも相談しやすくなります。町内会の行事や地域の交流の場に参加することも、関係づくりに役立ちます。外国籍スタッフの孤立を防ぐ|地域の交流の場や相談窓口につなぐもご覧ください。
近所からの嫌がらせへの対応のチェックリスト
- ☐ 何があったかを、本人から具体的に聞いた
- ☐ 近所の人が困っていることがないか、管理会社にも確認した
- ☐ 張り紙や壊された物の写真を撮り、記録を残した
- ☐ 身の危険がある場合、警察に相談した
- ☐ 国籍を理由にした嫌がらせについて、人権相談の窓口を案内した
- ☐ 本人や担当者が、相手に直接やり返していない
- ☐ 本人の気持ちと、住み続けたいかどうかを聞いた
- ☐ 必要に応じて、住み替えと費用の負担を検討した
まとめ
- 近所からの苦情には、理由のあるものと、国籍を理由にした嫌がらせがある。まず事実を確かめる
- 理由のある苦情は、改善して近所の人に報告することで関係が良くなることもある
- 嫌がらせは、日時や内容を記録し、写真や張り紙を残す
- 管理会社、警察(110番・#9110)、法務局の人権相談に相談し、相手に直接やり返さない
- 身の危険があるときや嫌がらせが続くときは、本人の安全を優先して住み替えも考える
相談の窓口や受付の時間は変わることがあります。最新の情報は、警察や法務省の案内でご確認ください。