入居のときに住まいのルールを口頭で説明しても、外国籍スタッフがすべてを覚えておくのは難しいものです。ゴミの出し方が分からなくなった、エアコンのリモコンの使い方を忘れた、夜中に水が漏れたときの連絡先が分からない。こうしたときに本人が見返せる資料があるかどうかで、トラブルの起こり方は大きく変わります。
この記事では、外国籍スタッフ向けに住まいのルールの資料を作るときの項目の選び方と、写真ややさしい日本語、翻訳を使って伝わる資料にするコツを解説します。オリエンテーションで説明する内容そのものは生活オリエンテーションで伝えたい住まいのルール|ゴミ出し・騒音・家賃の支払いでまとめています。
結論:「写真+やさしい日本語+母国語」で、1項目1ページにまとめる
伝わる資料にするポイントは、文章を減らして写真やイラストで見せること、日本語はやさしい日本語で書くこと、そして本人の母国語を併記することの3つです。
さらに、ゴミ出し、騒音、緊急時の連絡先など、1つの項目を1ページにまとめると、必要なときに必要なページだけを見返せます。全部をまとめた冊子を1冊渡すよりも、ゴミ出しのページは台所に、緊急連絡先は玄関に、と貼り分けるほうが使われる資料になります。
資料に載せる項目
| 項目 | 載せる内容 | 置き場所の例 |
|---|---|---|
| 緊急時の連絡先 | 支援担当者、管理会社(夜間も)、110、119、水漏れや鍵をなくしたときの連絡先 | 玄関・冷蔵庫 |
| ゴミの出し方 | 種類ごとの分け方、収集日、出す時間、出す場所の写真 | 台所 |
| 音のルール | 夜10時以降に気をつけること、洗濯機を使ってよい時間 | リビング |
| 設備の使い方 | エアコン、給湯器、換気扇、インターホンの使い方 | 各設備の近く |
| 家賃と光熱費 | 本人負担の金額、支払いの方法と期日 | 手元の資料 |
| 災害のとき | 避難場所、非常持ち出し品、安否の連絡方法 | 玄関 |
| 禁止されていること | 契約にない人の宿泊、ペット、石油ストーブなど、物件ごとの禁止事項 | 手元の資料 |
| 退去のとき | 退去を決めたら誰にいつまでに伝えるか、部屋をどう返すか | 手元の資料 |
すべてを最初から作る必要はありません。まずは緊急時の連絡先とゴミの出し方の2つから作ると、入居直後のトラブルを大きく減らせます。災害への備えは災害への備え|住まいの防災と安否確認の準備、電気・ガス・水道の手続きは電気・ガス・水道の開始手続き|入居前に済ませておくこともあわせてご覧ください。
伝わる資料にする工夫
写真やイラストで見せる
- 実際の物件の写真を使う。ゴミ置き場、給湯器のリモコン、ブレーカーの場所など、その部屋で撮った写真が一番伝わります。
- 「よい例」と「だめな例」を並べる。正しく分けたゴミ袋と、間違った出し方の写真を並べると、文章よりはっきり伝わります。
- ボタンに印を付ける。エアコンのリモコンなら、「冷房」「暖房」「停止」のボタンを丸で囲みます。
やさしい日本語で書く
日本語の文章は、短く、はっきりと書きます。出入国在留管理庁と文化庁は「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を出しており、資料づくりの参考になります。
| 分かりにくい書き方 | やさしい日本語 |
|---|---|
| 可燃ごみは指定日の朝8時までに所定の集積所へ排出してください | 燃えるゴミは 月曜日と木曜日の 朝8時までに ここに 出します |
| 夜間の騒音にはご配慮ください | 夜10時から 朝まで 大きい声で 話しません |
| 漏水等の緊急時は下記までご連絡ください | 水が もれたら すぐに ここに 電話します |
一文に一つのことだけを書く、漢字にはふりがなを付ける、「〜しないでください」より「〜します」で書く、といった工夫で、日本語を学んでいる人にも読みやすくなります。
母国語を併記する
やさしい日本語に、本人の母国語を並べて書くと、より確実に伝わります。日本語と母国語を並べておけば、本人が日本語を覚える助けにもなり、日本人の担当者や管理会社も内容を確かめられます。
機械翻訳は、そのまま使わずに確かめる
翻訳アプリや機械翻訳は便利ですが、ゴミの分別の名前や、「原状回復」「解約予告」といった住まいの言葉は、意味が正しく伝わらない訳になることがあります。翻訳した文章は、その言語が分かるスタッフや通訳に一度見てもらいましょう。元の日本語をやさしい日本語にしてから翻訳すると、誤訳が少なくなります。
すでにある多言語の資料を活用する
一から作らなくても、公的機関が多言語で用意している資料があります。
- 自治体のゴミの分け方・出し方のガイド。多くの自治体が、英語や中国語、ベトナム語などで作っています。住んでいる地域のものを入手しましょう。
- 出入国在留管理庁の「生活・就労ガイドブック」。日本で暮らすときの手続きや生活のルールが、多くの言語でまとめられています。
- 自治体や国際交流協会の生活ガイド。防災や病院のかかり方などを、多言語で案内していることがあります。
こうした資料を土台にして、その物件だけのこと(ゴミ置き場の場所、管理会社の連絡先、物件ごとの禁止事項など)を自社の資料で補うと、作る手間を減らせます。
資料を渡すときと、その後
- 渡すだけでなく、一緒に読む。入居の日やオリエンテーションのときに、資料を見ながら実際の設備やゴミ置き場で説明します。入国前の事前ガイダンスで住まいのことを伝える場合は事前ガイダンスで説明すること|住まいと生活費をどう伝えるかをご覧ください。
- スマートフォンでも見られるようにする。紙の資料の写真やPDFを渡しておくと、外出先でも確認できます。
- 受け取った記録を残す。説明した日と、資料を渡したことを記録しておくと、トラブルのときに経過を説明しやすくなります。入居時の記録は入居時の部屋の写真記録とチェックシートの作り方で解説しています。
- トラブルが起きたら資料を見直す。同じ苦情が繰り返されるなら、資料の伝え方が足りていないかもしれません。たとえば騒音の苦情が続いた場合の対応は住まいの騒音の苦情を受けたとき|聞き取りから改善までで解説しています。
また、家賃の本人負担や退去のルールなど、会社として決めていることは、社宅規程の内容と資料の内容がずれないようにしておきましょう。規程の作り方は外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルールで解説しています。
資料づくりのチェックリスト
- ☐ 緊急時の連絡先とゴミの出し方のページを作った
- ☐ その物件で撮った写真を使った
- ☐ 1つの項目を1ページにまとめた
- ☐ 日本語をやさしい日本語で書き、ふりがなを付けた
- ☐ 本人の母国語を併記した
- ☐ 翻訳した文章を、その言語が分かる人に確認してもらった
- ☐ 自治体の多言語のゴミ出しガイドなどを入手した
- ☐ 本人と一緒に資料を読み、渡したことを記録した
- ☐ スマートフォンでも見られるように、写真やPDFを渡した
まとめ
- 住まいのルールの資料は、写真、やさしい日本語、母国語の3つを組み合わせて作る
- 1つの項目を1ページにまとめ、使う場所の近くに貼っておく
- まずは緊急時の連絡先とゴミの出し方から作る
- 機械翻訳はそのまま使わず、その言語が分かる人に確かめてもらう
- 自治体などの多言語の資料を土台にし、物件ごとのことを自社の資料で補う
- 渡すだけでなく一緒に読み、トラブルが起きたら資料を見直す
住まいのルールの資料は、一度作って終わりではありません。スタッフからの質問や、起きたトラブルをもとに、少しずつ分かりやすく育てていきましょう。