来日したばかりのスタッフが体調を崩したとき、どの病院に行けばよいのか、保険はどう使うのか、日本語で症状を伝えられるのか。分からないことが多いと、具合が悪くても我慢してしまい、症状を悪化させることがあります。
この記事では、入国直後に外国籍スタッフに伝えておきたい健康保険の仕組みと病院のかかり方、救急のときの対応、仕事中のけがの扱いを解説します。
結論:「保険の使い方」「最初に行く病院」「救急のとき」を入国直後に伝える
体調を崩してから説明していては間に合いません。入国直後の生活オリエンテーションで、健康保険の使い方、具合が悪いときに最初に行く病院、救急のときの連絡先の3つを伝えておきましょう。
あわせて、仕事中や通勤中のけがは健康保険ではなく労災保険の対象になることも、本人と受入れ企業の両方に伝えておくことが大切です。
健康保険の基本
会社の健康保険に加入する
会社に雇用されて社会保険の対象になる人は、勤務先の健康保険に加入します。病院の窓口で払う自己負担は、原則として医療費の3割です。医療費が高額になった月は、自己負担の上限を超えた分が払い戻される高額療養費の仕組みもあります。
保険証はマイナ保険証が基本に
従来の紙やカードの健康保険証は、2024年12月に新たな発行が終わり、現在はマイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」が基本になっています。マイナ保険証を持っていない人には、加入している健康保険から「資格確認書」が交付され、病院の窓口で保険証の代わりに使えます。
来日したばかりの人は、マイナンバーカードを受け取るまでに時間がかかります。それまでの間、資格確認書が手元にあるか、届いていない場合はどうするかを、受入れ企業の担当者と確認しておきましょう。
保険の手続き前に病院にかかったら
加入の手続きが終わる前で、保険証の代わりになるものが手元にないときに病院にかかると、いったん医療費を全額払うことになる場合があります。領収書を必ずもらっておけば、あとで健康保険に申請して自己負担分以外を払い戻してもらえることがあります。
病院のかかり方
まずは近くのクリニックへ
日本では、風邪や腹痛などの症状は、まず近くのクリニック(診療所)で診てもらうのが一般的です。紹介状なしで大きな病院に行くと、診察代とは別に特別な料金がかかることがあります。住まいの近くで、内科や外国語に対応しているクリニックを、入居のときに一緒に調べておきましょう。
受診のときに持って行くもの
- マイナ保険証または資格確認書
- 在留カード
- お金(診察代と薬代)
- お薬手帳(持っている場合)
- 症状をメモしたもの(いつから、どこが、どんなふうに)
言葉の壁への備え
症状を日本語で伝えるのは、日本語がある程度できる人でも難しいものです。外国人患者を受け入れている医療機関の一覧や、電話の医療通訳のサービスを、自治体や観光庁・日本政府観光局のウェブサイトなどで調べておくと安心です。症状を伝えるための指さしシートを、本人の言語で用意しておくのもよい方法です。
薬について
病院で処方箋をもらったら、薬局で薬を受け取ります。母国から持ってきた薬を飲んでいる場合は、日本の薬と一緒に飲んでよいか、医師や薬剤師に相談するよう伝えておきましょう。
救急のとき
- 救急車は119番。意識がない、呼吸が苦しい、大けがをしたときなど、命にかかわるときに呼びます。
- 救急車を呼ぶか迷ったら。地域によっては、救急車を呼ぶべきか相談できる電話窓口(#7119など)があります。住んでいる地域で使えるかを確認しておきましょう。
- 夜間や休日の病院。夜間・休日に診てもらえる急病診療所の場所を、市区町村のウェブサイトで調べておきます。
119番では、住所を日本語で伝える必要があります。住まいの住所を日本語とローマ字で書いたカードを、部屋に貼っておく、財布に入れておくなどしておくと、いざというときに役立ちます。
仕事中・通勤中のけがは労災保険で
仕事中や通勤中のけがや病気は、健康保険ではなく労災保険の対象です。病院の窓口で、仕事中のけがであることを伝えます。健康保険を使ってしまうと、あとで手続きのやり直しが必要になります。
本人は「会社に迷惑をかけたくない」と、仕事中のけがを言い出さないことがあります。仕事中のけがは必ず会社に報告すること、労災保険を使うことは本人の当然の権利であることを、受入れ企業とあわせて伝えておきましょう。
健康を守るために日頃からできること
- 雇い入れ時と年に一度の健康診断を受けてもらう
- 定期面談で、体調や睡眠、食事について聞く
- 相談しやすい雰囲気をつくり、体調の不安を早めに話してもらう
体調の相談は、本人が言い出しにくいことも多い分野です。定期面談での聞き方は定期面談の進め方とチェック項目|住まい・生活の困りごとの聞き方で解説しています。
住まいと病院の関係
住まいの近くに病院やクリニックがあるかは、暮らしやすさを大きく左右します。特に車のない人が多い外国籍スタッフにとって、歩いてや自転車で通える範囲にクリニックがあると安心です。地方での住まい選びの注意点は車通勤が前提の地域での住まい探し|地方の受入れで気をつけることで解説しています。
入国直後に伝えることのチェックリスト
- ☐ 健康保険の仕組みと、自己負担が原則3割であることを伝えた
- ☐ マイナ保険証または資格確認書が手元にあるか確認した
- ☐ 住まいの近くのクリニックを一緒に調べた
- ☐ 受診のときに持って行くものを伝えた
- ☐ 外国語に対応した医療機関や医療通訳の情報を渡した
- ☐ 救急車は119番、相談窓口があれば番号を伝えた
- ☐ 住所を日本語とローマ字で書いたカードを用意した
- ☐ 仕事中・通勤中のけがは労災保険になることを伝えた
入国直後のほかの手続きは、入国直後の生活立ち上げチェックリスト|住居地の届出・口座・携帯の順番にまとめています。健康保険料が給与から差し引かれることは、事前ガイダンスの段階で伝えておくと安心です。説明のポイントは事前ガイダンスで説明すること|住まいと生活費をどう伝えるかをご覧ください。
まとめ
- 入国直後に、保険の使い方、最初に行く病院、救急のときの連絡先を伝える
- 保険証はマイナ保険証が基本。持っていない人には資格確認書が交付される
- まずは住まいの近くのクリニックへ。言葉の壁には医療通訳や指さしシートで備える
- 救急車は119番。住所を日本語で伝えられるようにカードを用意しておく
- 仕事中・通勤中のけがは労災保険。必ず会社に報告するよう伝える
保険証の取り扱いや救急の相談窓口は、制度の変更や地域によって異なります。最新の情報は、加入している健康保険や市区町村の窓口でご確認ください。