段階5 就労開始後の支援

外国籍スタッフの家賃滞納が起きたとき|原因の聞き取りと支払いの立て直し

「家賃が引き落とされていないと保証会社から連絡が来た」「本人負担の家賃が2か月分払われていない」。外国籍スタッフの家賃の滞納は、支援担当者にとって対応に悩むトラブルの一つです。放っておくと、本人が住まいを失うだけでなく、保証会社や管理会社との関係、次の入居者の審査にまで影響することがあります。

この記事では、外国籍スタッフの家賃の滞納が起きたときに、原因を聞き取り、支払いを立て直すまでの進め方と、再発を防ぐための仕組みづくりを解説します。

結論:「早く気づく・原因を聞く・払える計画を立てる」の3段階で対応する

家賃の滞納は、1か月目のうちに気づいて動くほど解決しやすくなります。2か月、3か月とたまってしまうと、本人の力だけでは返せない金額になり、契約の解除が問題になることもあります。

対応するときは、責める前になぜ払えなかったのかを聞き、本人の収入と支出から無理なく払える計画を立てます。外国籍スタッフの滞納は、お金がないことよりも、支払いの仕組みを理解していなかったことが原因になっている場合も少なくありません。

契約の形による違い

契約の形 滞納が起きたとき 支援担当者の役割
本人契約(保証会社あり) 保証会社が貸主に家賃を立て替え、本人に支払いを求める。督促の連絡が本人や緊急連絡先に届く 本人と保証会社の間に入り、事情の説明と支払いの相談を手伝う
借上げ社宅(会社が契約) 家賃は会社が貸主に払っているため、貸主への滞納にはならない。本人負担分が会社に払われない形になる 会社と本人の間で、本人負担分の支払い方法を立て直す

本人契約では、保証会社への支払いが滞ると、その記録がその後の部屋探しの審査に影響することがあります。借上げ社宅では、会社が家賃を払い続けている分、会社の負担がふくらみます。どちらの形でも、早めの対応が大切です。契約の形ごとの違いは借上げ社宅と本人契約、どちらを選ぶ?費用・手間・退去時の違いで解説しています。

滞納が起きやすい原因

原因 よくある例
支払いの仕組みを知らない 口座振替の日に残高が足りなかった。振込の期日を知らなかった。請求書が日本語で読めなかった
口座の問題 給料の口座と引き落としの口座が違う。口座を解約した、または使えなくなっていた
収入が減った 残業やシフトが減った。けがや病気で休んだ
支出が増えた 2年目から住民税が引かれ始め、手取りが減った。母国への仕送りを増やした
借金や出費 来日前の借金の返済、母国の家族の急な出費、詐欺の被害

特に多いのが、2年目から住民税が給料から引かれ始めて、手取りが減るケースです。本人はその仕組みを知らず、前の年と同じように仕送りをして家賃が払えなくなることがあります。住民税については外国籍スタッフの住民税|2年目の手取りと帰国時の納税、口座のトラブルは銀行口座が作れないときの対処法|断られやすい理由と準備もご覧ください。

本人からの聞き取り

  • 本人が理解できる言語で、落ち着いて話す。保証会社からの督促に不安を感じていることも多いため、まずは話を聞く姿勢を伝えます。
  • いくら、いつから払えていないかを確かめる。請求書や督促の書類を一緒に見て、金額と期日を確認します。
  • 払えなかった理由を聞く。上の表のどれに当たるかを確かめ、原因に合わせた対策を考えます。
  • 毎月の収入と支出を一緒に書き出す。手取りの給料、家賃、光熱費、携帯電話、仕送り、返済などを並べると、どこに無理があるかが見えてきます。
  • ほかにも払えていないものがないか聞く。光熱費や携帯電話の料金なども滞っていることがあります。

聞き取りの内容と、決めたことは記録に残しておきます。記録の残し方は相談・苦情対応の記録の残し方|支援実施状況の確認に備えるで解説しています。

支払いを立て直す

払える計画を立てる

たまった家賃を一度に払えない場合は、本人負担分の支払い方法や、保証会社への支払いについて、分けて払えないかを相談します。計画を立てるときは、次の点に気をつけましょう。

  • 毎月の家賃に上乗せして返す金額は、本人の手取りから無理のない範囲にする
  • いつまでに、毎月いくら払うかを書面にし、本人が理解できる言語で説明する
  • 本人契約の場合は、保証会社に支払いの計画を伝えて合意を得る

原因に合わせた対策

  • 口座の残高不足なら、給料の口座と引き落としの口座を同じにする、引き落としの日を給料日のあとにできないか相談する。
  • 手取りの減少なら、住民税などで手取りが変わることを説明し、仕送りの金額を一緒に見直す。
  • 家賃が収入に合っていないなら、家賃の安い住まいへの住み替えや、ルームシェアも考える。

給料から差し引くときは、ルールに沿って

借上げ社宅で、本人負担分の家賃を給料から差し引く場合は、労使協定を結んでおく必要があります。たまった分をまとめて給料から差し引くと、本人の生活が立ち行かなくなることがあるため、本人と話し合って無理のない金額にしましょう。社宅の家賃負担のルールは外国籍スタッフの社宅規程の作り方|家賃負担・退去・備品のルールで解説しています。

やってはいけない対応

家賃の滞納があっても、次のような対応はとってはいけません。法律に違反したり、本人の権利を侵害したりするおそれがあります。

  • 本人に無断で部屋の鍵を替える、部屋に入る
  • 本人の荷物を勝手に運び出す、処分する
  • パスポートや在留カードを預かって、支払いを迫る
  • 夜遅くや早朝に何度も督促する、職場の同僚の前で問い詰める
  • 「払わなければ国に帰す」と脅す

本人契約で保証会社の督促が行き過ぎていると感じるときは、本人と一緒に保証会社に相談し、必要であれば消費生活センターなどに相談しましょう。

払えない状態が続くとき

計画を立てても支払いが続かない場合は、住まいそのものを見直す時期かもしれません。家賃の安い住まいへの住み替えや、会社の寮に移ることを考えます。本人契約で滞納が長引くと、契約の解除と退去を求められることがあり、その後の部屋探しにも影響します。保証会社の審査が通りにくくなったときの部屋探しは保証会社の審査に落ちたときの対処法|外国籍スタッフの部屋探しで解説しています。

また、滞納が残ったまま退職や帰国になると、本人にも会社にも大きな負担が残ります。帰国が決まったときの清算の段取りは退職・帰国が決まったら|届出と住まいの退去の段取りをご覧ください。

再発を防ぐために

  • 入居のときに支払いの仕組みを説明する。家賃の金額、支払い方法、引き落としの日、残高が足りないとどうなるかを伝えます。説明のポイントは生活オリエンテーションで伝えたい住まいのルール|ゴミ出し・騒音・家賃の支払いでまとめています。
  • 給料日と引き落としの日の関係を確認する。給料日の前に引き落としがあると、残高不足が起きやすくなります。
  • 2年目の住民税の前に知らせる。手取りが変わる時期の前に、本人に伝えておきます。
  • 定期面談でお金のことも聞く。仕送りや借金の悩みは、本人から言い出しにくいものです。面談の進め方は定期面談の進め方とチェック項目|住まい・生活の困りごとの聞き方で解説しています。
  • 保証会社や管理会社から連絡が来る流れをつくる。滞納が起きたときに、支援担当者にも早く情報が届くよう、緊急連絡先などを整えておきます。

家賃滞納への対応のチェックリスト

  • ☐ 滞納の金額と、いつから払えていないかを確認した
  • ☐ 本人が理解できる言語で、払えなかった理由を聞いた
  • ☐ 毎月の収入と支出を一緒に書き出した
  • ☐ 無理なく払える計画を立て、書面にして説明した
  • ☐ 本人契約の場合、保証会社に計画を伝えて合意を得た
  • ☐ 口座や引き落としの日など、原因に合わせた対策をとった
  • ☐ 鍵の交換や荷物の運び出しなど、やってはいけない対応をしていない
  • ☐ 聞き取りの内容と決めたことを記録した

まとめ

  • 家賃の滞納は、1か月目のうちに気づいて動くほど解決しやすい
  • 本人契約では保証会社との調整、借上げ社宅では会社と本人の間の本人負担分の立て直しが中心になる
  • 支払いの仕組みを知らない、口座の残高不足、2年目の住民税による手取りの減少などが原因になりやすい
  • 収入と支出を一緒に書き出し、無理なく払える計画を書面にする
  • 鍵の交換や荷物の運び出し、パスポートを預かるなどの対応はしてはいけない
  • 入居時の説明、給料日と引き落とし日の確認、定期面談で再発を防ぐ

滞納への対応は、契約の内容や本人の事情によって変わります。法的な判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

次の段階 6. 届出・更新

このガイドの運営者

不動産のイブキ(伊吹株式会社)。外国籍スタッフの住まいの手配を全国で行っています。制度は改正されることがあるため、手続きの最終確認は出入国在留管理庁などの公式情報もあわせてご確認ください。