外国籍スタッフに社宅や寮を用意している会社でも、社宅規程がない、あるいは日本人の転勤者向けの古い規程のまま、ということは少なくありません。ルールが決まっていないと、家賃の負担や退去の時期、備品の扱いをめぐって、そのつど話し合うことになり、トラブルのもとになります。
この記事では、外国籍スタッフの社宅規程に入れておきたい項目と、特に決めておきたいルール、外国籍スタッフならではの注意点を解説します。
結論:本人負担額・退去の条件・備品と原状回復の3つを先に決める
社宅規程で最もトラブルになりやすいのは、本人に負担してもらう家賃などの額、退去の条件、備品と退去時の原状回復の扱いの3つです。この3つを数字や期限まではっきり書いておけば、多くのトラブルは防げます。
また、規程は作るだけでは意味がありません。入居の前に本人が理解できる言語で説明し、同意を得ておくことが大切です。
社宅規程に入れておきたい項目
| 項目 | 決めておくこと |
|---|---|
| 目的と対象者 | どの従業員が社宅を使えるか |
| 入居の手続き | 入居の申込み、入居日の決め方、入居時の確認 |
| 本人負担額 | 家賃・共益費のうち本人が負担する額と、その計算方法 |
| 光熱費・通信費 | 誰の名義で契約し、誰が払うか |
| 支払い方法 | 給与から差し引くか、本人が直接払うか |
| 備品の貸与 | 会社が貸す家具・家電の範囲と、管理の仕方 |
| 禁止事項 | 無断の同居、又貸し、ペット、部屋の改造など |
| 修繕と故障 | 壊れたときの連絡先と、修理費の負担の考え方 |
| 異動・転居 | 勤務地が変わったときの住み替えと費用の負担 |
| 退去 | 退去する場面、退去までの猶予期間、退去時の手続き |
| 原状回復 | 退去時の費用のうち本人が負担する範囲 |
特に決めておきたい3つのルール
1. 本人負担額
本人に負担してもらう額は、計算の方法まで書いておきます。特定技能外国人に借上げ社宅を提供する場合は、本人負担は借上げにかかる費用(管理費・共益費を含む)を入居人数で割った額までで、住まいの提供で会社が利益を得ることは認められません。敷金・礼金や仲介手数料は会社の負担になります。
また、会社が受け取る本人負担額が少なすぎると、その差額が給与として課税の対象になることがあります。負担額を決めるときは、税理士にも確認しておくと安心です。給与から差し引く場合は、労使協定も必要です。方式ごとの費用の違いは借上げ社宅と本人契約、どちらを選ぶ?費用・手間・退去時の違いで整理しています。
2. 退去の条件
退職したとき、異動したとき、規程に違反したときなど、退去してもらう場面を書いておきます。外国籍スタッフは次の住まいを見つけるのに時間がかかることが多いため、「雇用契約の終了日から〇日以内に退去する」のように、退去までの猶予期間も決めておきましょう。猶予期間の考え方は派遣契約が終わったときの寮の退去|猶予期間と次の住まいで解説しています。
3. 備品と原状回復
会社が貸す家具・家電は一覧にして、入居時に本人と一緒に確認します。退去時の原状回復については、普通に使っていて生じた傷みは本人の負担にしない、故意や不注意による傷や汚れは本人の負担にする、という考え方を基本に、負担の範囲を書いておきます。備品の考え方は家具・家電はどこまで用意する?最低限そろえたい生活用品リスト、原状回復の考え方は外国籍スタッフの住まいのトラブル対応|騒音・ゴミ・退去時の原状回復で解説しています。
外国籍スタッフだけ不利なルールにしない
特定技能では、外国人であることを理由に、福利厚生施設の利用などで差別的な扱いをしてはいけないとされています。社宅規程も、日本人の従業員と同じ考え方で作るのが基本です。外国籍スタッフだけ本人負担額を高くする、退去の条件を厳しくするといったルールは避けましょう。
外国籍スタッフに合わせて加えたい内容
- ルームシェアのルール。相部屋の場合の部屋割りの決め方、共用部分の掃除やゴミ出しの分担
- 来客と宿泊。友人や家族を泊めるときのルールと、契約にない人の同居の禁止
- 一時帰国のとき。長く部屋を空けるときの連絡、その間の本人負担額の扱い
- 帰国するとき。私物の処分、鍵の返却、最後の精算の方法
- 家族を呼び寄せるとき。単身用の社宅から住み替える場合の扱い
社宅規程を作る流れ
- 今の運用を書き出す。本人負担額の決め方や退去のときの対応など、今どうしているかを整理します。
- 項目ごとにルールを決める。上の表を使って、決まっていない項目を埋めます。
- 専門家に確認する。給与からの差し引き、課税、退去の扱いなどは、社会保険労務士や税理士に確認します。
- 本人が理解できる言語で資料を作る。規程の全文でなくても、要点をまとめた説明資料を用意します。
- 入居前に説明し、同意を得る。説明した内容と同意を書面に残します。
入居前の説明は、事前ガイダンスの段階から始めておくと、入国後の「聞いていなかった」を防げます。説明のポイントは事前ガイダンスで説明すること|住まいと生活費をどう伝えるかでまとめています。
社宅規程のチェックリスト
- ☐ 本人負担額の計算方法が書いてある
- ☐ 光熱費・通信費の名義と支払い方法が決まっている
- ☐ 給与から差し引く場合の労使協定がある
- ☐ 貸す備品の一覧と、入居時の確認の方法がある
- ☐ 退去する場面と、退去までの猶予期間が書いてある
- ☐ 原状回復の費用のうち、本人が負担する範囲が書いてある
- ☐ 日本人の従業員と比べて不利な扱いになっていない
- ☐ 本人が理解できる言語の説明資料と、同意書がある
まとめ
- 社宅規程では、本人負担額、退去の条件、備品と原状回復の3つを特にはっきり決める
- 特定技能の借上げ社宅では、本人負担は費用を入居人数で割った額まで。敷金・礼金などは会社の負担
- 外国籍スタッフの事情を考えて、退去までの猶予期間を決めておく
- 外国籍スタッフだけ不利になるルールは避け、日本人の従業員と同じ考え方で作る
- 入居前に本人が理解できる言語で説明し、同意を書面に残す
社宅規程の内容は、会社の状況によって変わります。給与からの差し引きや課税、退去の扱いについては、社会保険労務士や税理士、弁護士などの専門家にもご相談ください。