特定技能外国人の住まいを用意するとき、最初に決めることになるのが「会社が借りて住んでもらう(借上げ社宅)」か「本人に契約してもらい、それを支援する(本人契約)」かです。どちらにも向き不向きがあり、受入れ企業から「どちらがいいですか」と相談されることも多いのではないでしょうか。
この記事では、借上げ社宅と本人契約の違いを、費用・手続きの手間・退去時の対応の3つの面から比べ、受入れのケースごとの選び方を解説します。
結論:海外からの受入れは借上げ社宅、国内在住者は両方を検討
海外から呼び寄せる場合は、入国前に住まいを確定させやすい借上げ社宅が基本です。本人は入国するまで在留カードを持っていないため、本人名義の契約は入国後になりがちで、入国直後の住まいが宙に浮いてしまいます。
すでに日本に住んでいる人を受け入れる場合は、在留カードがあるため本人契約も選べます。費用負担の考え方や、退職したときの扱いをどうしたいかで選ぶとよいでしょう。
2つの方式の違い
| 比べる点 | 借上げ社宅 | 本人契約 |
|---|---|---|
| 借主(契約する人) | 受入れ機関 | 外国人本人 |
| 入国前の契約 | できる | 難しいことが多い(在留カードが必要なため) |
| 入居審査 | 会社が審査を受けるため通りやすい | 本人の在留期間や収入を見られる。外国籍の入居に対応できる物件に限られやすい |
| 敷金・礼金・仲介手数料 | 受入れ機関の負担 | 本人の負担が基本 |
| 家賃の支払い | 会社が貸主に払い、本人負担分を給与から差し引くことが多い | 本人が直接払う |
| 保証人・保証会社 | 会社名義で手配 | 連帯保証人がいなければ、受入れ機関などが連帯保証人になるか、保証会社を確保して緊急連絡先を引き受ける |
| 退職したとき | 会社が解約し、本人は退去するのが一般的 | 本人がそのまま住み続けることもできる |
費用の違い
借上げ社宅の場合
敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用は受入れ機関の負担です。本人に負担してもらえる家賃は、借上げにかかる費用(管理費・共益費を含む)を入居人数で割った額までで、住まいの提供で利益を得ることは認められません。
また、会社が本人から受け取る家賃が少ない場合、その差額が給与として課税の対象になることがあります。本人の負担額をいくらにするかは、税理士にも確認しておくと安心です。
本人契約の場合
初期費用は本人の負担が基本です。入社したばかりで手持ちのお金が少ない人には、まとまった初期費用が大きな負担になります。会社が初期費用の一部を補助したり、貸付けをしたりするケースもありますが、その場合は取り決めを書面に残しておきましょう。
派遣会社で寮や社宅を用意する場合の費用の内訳は、派遣会社が外国籍スタッフの寮・社宅を用意するときの費用と注意点で詳しく解説しています。
手続きの手間の違い
- 借上げ社宅。契約・解約・更新の手続きを会社が行います。入居者が入れ替わるときの届出や、退去時の立ち会いも会社側の仕事です。物件が増えるほど、契約の管理が大きな手間になります。
- 本人契約。契約の当事者は本人ですが、日本語での契約内容の説明、内見や契約への同行、保証の手配などで支援担当者の手間がかかります。入居後のやり取りも本人が行うため、トラブルが起きたときに会社が状況をつかみにくい面があります。
退去時の違い
退職や転職のときに差が出やすいのが、住まいの扱いです。
借上げ社宅では、本人が退職すると会社が解約し、本人には退去してもらうのが一般的です。ただし、次の住まいがすぐに見つからない外国籍の方にとっては、退職と同時に住まいを失うことになります。退去までの猶予期間を決めておくと、トラブルを防ぎやすくなります。また、解約予告の期間や短期解約の違約金にも注意が必要です。
本人契約なら、退職しても本人がそのまま住み続けられます。転職先が近くにある場合などは、本人にとって負担が小さく済みます。一方で、会社が連帯保証人になっている場合は、退職後もその責任が残ることがあるため、保証の扱いを事前に確認しておきましょう。
転職で住まいが移るときの進め方は、国内転職の特定技能外国人を受け入れるとき|在留資格変更と引っ越しの進め方で解説しています。
ケース別の選び方
| ケース | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 海外から呼び寄せる | 借上げ社宅 | 入国前に住まいを確定でき、入国日から生活を始められる |
| 複数名を同時に受け入れる | 借上げ社宅 | まとめて契約でき、部屋割りや入れ替えを会社で調整しやすい |
| 国内在住者で、すでに住まいがある | 本人契約(今の住まいを継続) | 引っ越しが不要なら、本人の負担が最も小さい |
| 国内在住者で、長く働く見込みが高い | どちらも可 | 費用負担の考え方と、退職時の扱いをどうしたいかで選ぶ |
| 入居審査に通りにくいことが予想される | 借上げ社宅 | 会社が借主になることで、選べる物件の幅が広がる |
最初は借上げ、慣れたら本人契約も
入国直後は借上げ社宅に住んでもらい、日本での生活に慣れて在留カードや収入の実績ができた段階で、本人が希望すれば本人契約の住まいへ移る、という組み合わせもあります。本人の希望や定着の状況に合わせて柔軟に考えましょう。
選んだ方式は支援計画にも反映する
どちらの方式を選ぶかで、支援計画に書く内容も変わります。借上げ社宅なら入居時期や本人負担額の決め方、本人契約なら物件探しの補助や保証の手当てを書いておく必要があります。記載のポイントは支援計画の「住居確保」欄の書き方|3つの方式ごとの記載例でまとめています。
また、方式によって物件探しを始められる時期も変わります。手配のスケジュールは特定技能の住居確保はいつから動く?入国日から逆算した物件手配のスケジュールをご覧ください。
まとめ
- 海外から呼び寄せる場合は、入国前に住まいを確定できる借上げ社宅が基本
- 国内在住者は在留カードがあるため、本人契約も選べる
- 借上げ社宅は初期費用が会社負担で、本人負担の家賃は借上げ費用を人数で割った額まで
- 本人契約は初期費用が本人負担になりやすく、保証の手当てと緊急連絡先が必要
- 退職時、借上げ社宅は退去が一般的、本人契約は住み続けられる。猶予期間や保証の扱いを事前に決めておく
費用負担や課税の扱いは、受入れ企業の状況によって変わります。最終的な判断は、出入国在留管理庁の運用要領のほか、税理士や社会保険労務士などの専門家にもご確認ください。