寮・社宅に住む外国籍スタッフに「住まいで困っていることはない?」と面談で聞いても、「大丈夫です」と答えが返ってくることがよくあります。会社が用意してくれた住まいに不満を言うのは失礼だと考えたり、担当者の前では言いにくかったりするためです。
不満を言えないまま我慢が続くと、ある日突然の退職や転籍につながることがあります。この記事では、住まいの本音を早めに知るための入居者アンケートの作り方と、結果の生かし方を解説します。
結論:無記名・本人の言語・短い選択式で聞き、結果と改善を入居者に返す
入居者アンケートは、無記名で、本人の言語で、選択式を中心に短く作ると、本音を聞きやすくなります。面談とは別の方法で聞くことで、面談では出てこなかった不満が見えてきます。
大切なのは、アンケートをとったあと、結果と、それを受けて何を改善するかを入居者に伝えることです。答えても何も変わらないと感じると、次からは本音を書いてもらえなくなります。
聞きたい質問項目の例
| 分野 | 質問の例 | 答え方 |
|---|---|---|
| 全体の満足度 | 今の住まいに満足していますか | 満足・ふつう・不満の3段階など |
| 部屋 | 部屋の広さ、暑さ・寒さ、においや虫は気になりますか | 選択式 |
| 設備 | エアコン、洗濯機、インターネットなどで困っていることはありますか | 選択式+自由記入 |
| 同居人・共同生活 | 同じ部屋や寮の人との関係で困っていることはありますか | 選択式 |
| 費用 | 寮費や光熱費の金額に納得していますか | 選択式 |
| 立地 | 職場やお店、駅までの距離で困っていることはありますか | 選択式 |
| 相談のしやすさ | 住まいのことを担当者に相談しやすいですか | 選択式 |
| 自由な意見 | 住まいについて、変えてほしいことがあれば書いてください | 自由記入(母語で可) |
住まいへの不満が出やすい点と改善策は住まいの満足度を上げて定着につなげる|外国籍スタッフが不満を持ちやすい点と改善策で解説しています。
質問は10問ほどにしぼる
質問が多すぎると、途中で答えるのをやめてしまったり、よく読まずに答えたりします。5分ほどで答えられる10問程度にしぼり、選択式を中心にしましょう。自由記入は、母語で書いてよいことにすると、細かい気持ちまで書いてもらいやすくなります。
本音を聞くための工夫
- 無記名にする。名前を書かなくてよいことをはっきり伝えます。
- 本人の言語で作る。質問文は本人の言語ややさしい日本語で作り、選択肢には顔のイラストなどを添えると分かりやすくなります。
- 答え方を選べるようにする。スマートフォンで答えられるオンラインのフォームと、紙の用紙の両方を用意します。
- 担当者の前で書かせない。面談の場で記入させると、担当者の目を気にして本音を書きにくくなります。
- 答えても不利にならないと伝える。不満を書いても、評価や待遇に影響しないことを伝えます。
少人数の寮では、答えた人が分からないように配慮する
入居者が数人の寮では、国籍や部屋番号などを聞くと、無記名でも誰が答えたか分かってしまいます。少人数の場合は、属性を聞く質問を減らし、結果をまとめるときも、個人が特定されない形で伝えましょう。集めた回答は、見られる人を限って管理します。入居者の個人情報の扱い方|在留カードの写しや連絡先を、不動産会社や管理会社と共有するときの注意もご覧ください。
実施する時期
| 時期 | ねらい |
|---|---|
| 入居から3か月ほどたったころ | 暮らしに慣れたころの不満や、入居前に聞いていた話との違いを知る |
| 年に1〜2回の定期 | 夏の暑さや冬の寒さなど、季節ごとの困りごとを知る。前回からの変化を見る |
| 寮費や設備を変えたあと | 変更が受け入れられているかを確かめる |
| 退去するとき | 住んでみて分かった改善点を、次の入居者のために聞く |
入居してからのフォローの進め方は入居してから3か月のフォロー|1週間・1か月・3か月で確認したい住まいのこと、面談での聞き方は定期面談の進め方とチェック項目|住まい・生活の困りごとの聞き方で解説しています。
結果の生かし方
- 結果をまとめる。寮や物件ごとに、満足度と多かった不満をまとめます。
- すぐできる改善から手をつける。網戸の修理、共用部のルールの見直し、インターネットの速さの確認など、費用をかけずにできることから進めます。
- 費用がかかる改善は計画を立てる。エアコンの交換や物件の見直しなど、受入れ企業と相談して計画を立てます。
- 入居者に結果と改善を伝える。「こんな声があったので、こう変えます」と、本人の言語で伝えます。
- 次のアンケートで変化を見る。改善のあと、満足度が上がったかを確かめます。
見回りのときに確認したいことは寮・社宅の見回り訪問のしかた|確認するポイントと記録、費用の不満が多いときの寮費の見直しは寮費を見直すとき|家賃や光熱費の値上がりを外国籍スタッフにどう伝え、どう決めるか、同居人との不満が多いときの部屋割りは国籍の違うスタッフが同じ寮に住むとき|部屋割りの考え方とトラブルを防ぐ工夫、インターネットへの不満は寮・社宅にインターネットを用意する|回線の選び方、費用の負担、使い方のルールをご覧ください。
アンケートの結果は、受入れ企業への提案の材料にもなる
「寮の満足度が低く、理由はエアコンの古さと部屋の狭さ」といった結果は、受入れ企業に住まいの見直しを提案するときの根拠になります。入居者の声を数字で示すことで、費用をかけた改善を相談しやすくなります。
入居者アンケートのチェックリスト
- ☐ 質問を10問ほどにしぼり、選択式を中心にした
- ☐ 本人の言語ややさしい日本語で質問を作った
- ☐ 無記名で答えられ、答えても不利にならないことを伝えた
- ☐ スマートフォンと紙の両方で答えられるようにした
- ☐ 少人数の寮では、答えた人が分からないよう配慮した
- ☐ 入居から3か月ごろと、年に1〜2回の定期で実施している
- ☐ 結果をまとめ、すぐできる改善から進めた
- ☐ 結果と改善の内容を、入居者に伝えた
まとめ
- 外国籍スタッフは、面談では住まいの不満を言わないことが多い
- アンケートは、無記名、本人の言語、選択式中心で10問ほどにする
- 少人数の寮では、答えた人が特定されないよう配慮する
- 入居から3か月ごろ、年に1〜2回、寮費や設備を変えたあとなどに実施する
- 結果と改善の内容を入居者に伝え、次のアンケートで変化を確かめる
アンケートの内容や実施の方法は、寮の規模や入居者の状況に合わせて調整してください。